大橋トリオ、10周年の集大成ライブ“ TRIO ERA”を開催!「音楽って楽しいですね」

大橋トリオが10周年を記念するライブ「ohashiTrio 10th ANNIVERSARY SPECIAL CONCERT “TRIO ERA”」を、東京国際フォーラム ホールAで開催した。開演前、深い青に照らし出されたステージ上には、ギターとアンプ、そしてグランドピアノだけが据えられていた。会場は無数の鳥のさえずりがこだましている。大橋トリオのライブグッズである“TRIO ECHO”(バードエコー)を観客が鳴らしているのだ。

開演時刻を少し過ぎたころ、デヴィッド・シルヴィアン&坂本龍一の「Fobidden Colours」のSEがボリュームアップすると、会場はざわめきだす。小鳥のさえずりと人々の拍手が入り混じった会場に、大橋トリオはひとり、全身白の衣装をまとい、ゆっくりとステージに現れた。

最初に弾き語ったのは「はじまりの唄」。端正で落ち着いたピアノの音色と寂しげなのに芯のある歌声がオーディエンスを包みこむ。気づけば小鳥のさえずりも聴衆の話し声も聞こえない。大橋の奏でる音色と歌声によって、先ほどまでのざわめきは幻のように去っていた。 1番を歌い終えると、左右からバンドメンバーの乗ったステージが現れる。上からは“TRIO ERA”の字をかたどった電飾が降りてきた。大橋はバンドの演奏を右手で指揮する。そして始まったのは「SHE」だ。原曲以上に凄まじいコーラスワーク。先日とあるインタビューで大橋は、デビュー当時に見たルーファス・ウェインライトのライブが人生一衝撃だったとした上で、「僕はいろんな楽器をやるようにしていて(中略)サポートメンバーにもそうあってほしいんです。ルーファスのバンドメンバーを見ちゃっているから、『目指すならそこでしょ』と。今集めているメンバーは、やれることの幅がなるべく広い人で固めるようにしています」と語っていたが、確かにこのバンドメンバーたちは綺麗なコーラスを聴かせる。歌もひとつの楽器だ。

後半は観客の手拍子をメトロノームにするようにして演奏が繰り広げられ、大橋の観客に対する信頼が感じられた。大橋トリオのライブにおける観客は、“TRIO ECHO”を鳴らしたり、手拍子をしたり、ライブを作り上げる重要な役割を担う。観客を楽しく巻きこんで、ハッピーな時空を立ち上げる親しみ深いライブだ。「Baumkuchen」では、バウムクーヘンを模したような照明がくるくると回り、曲世界を忠実に再現する。この曲もまたコーラスが印象的で、人間の声が他のどんな楽器にも生み出せないエモーションを孕んでいることを明らかにする。割れんばかりの拍手はそのまま手拍子となった。大橋が「まだ早いですが、立ってみますか」というと観客は総立ちになり、アダルトなロックナンバー「マチルダ」をパフォーマンス。「やりたい曲がたくさんあったので、こんなことを思いつきました。題して、大橋トリオ“ダンスチューンメドレー”」と宣言し「摩天楼バタフライ」が始まった。ギリギリに抑制したドラムのビートとうねるベースがセクシーなナンバーだ。会場が揺れはじめた。
大橋トリオ“初”の試みだというメドレーは「GOLDFUNK」、「CLAMCHOWDER」、「Happy Trail」、「僕らのこの声が君に届くかい」と続いた。「ダンスチューン」と命名したわりに、後半はしっとりと聞かせるあたり、大橋の捉える“ダンス”は幅広い。名曲の数々が矢継ぎ早に流れていく。

「ヒートアップしすぎました。メドレーを入れる場所を間違えましたね、アンコールの方がよかったかな」と笑う大橋は、グランドピアノの前に戻り「お察しの通り、ちょっとしっとりな曲を」と言って「トリドリ」をパフォーマンス。それぞれのセクションが複雑な演奏を繰り広げるにも関わらず統一感あるアレンジが、この楽曲の詞世界(「いろんな人と人とが出会って、一つ一つ積み上がっていく」)を豊かにイメージさせる。曲も中盤にさしかかると、これまでのバンドメンバーのさらに後方に再び左右からステージが足され、ストリングスとホーンが追加される。総勢14人の豪華な編成だ。荒々しくも優美な音世界が繰り広げられ、その中心で大橋とコーラスの歌声が気持ちよく響いた。少し間があって、オーディエンスのバードエコーが空間を満たすと、やがて爪弾かれるギターの音に先導されて「A BIRD」が奏でられる。世界への好奇心を携え、恐る恐るだが、一歩一歩着実に進んでいく、少年の冒険譚を思わせる楽曲だ。

大橋が「素晴らしいメンバーで、10周年を飾れて本当に嬉しいと思います。で、もっと嬉しいことに、素敵なゲストの方が来てくれて」と語り、Every LIttle Thingの持田香織を紹介。会場はめっきり色めきたつ。大橋が「ELTの中でも僕がどうしても好きな曲」である「キヲク」をパフォーマンス。持田の歌声がストリングスと絡み合い昇華する。持田は常にグランドピアノの前に座る大橋の側に、わずかに体を向けて歌っていた。大橋と持田は時折、目を合わせて頷きあっていた。
つづけて大橋がアレンジした「静かな夜」を熱唱。青と白のイルミネーションが夜空のようにキラキラと光る中、持田の歌唱に大橋がハモる。さすがに2人がコラボレーションした楽曲だけあって、安定感抜群だ。持田が去ると大橋もステージを後にし、バンドメンバーも全員舞台から消えた。やがて出てきたのはサンタ帽をかぶったオルガン担当の小林創。グランドピアノの前に座ると、“Santa Claus Is Coming To Town”をジャズテイストに即興で弾き倒す。客席からは自然と手拍子が起こり、メンバーは鈴を鳴らしながらステージに戻ってきた。遅れてきた大橋は赤のセットアップに身をつつみ、アコギを抱えている。

「着替えに手間取ってしまいまして……さすが百戦錬磨の小林創」と言って、場を繋いだ小林に感謝を伝えると、「大橋トリオ恒例、マイク1本コーナー」と称し、「宇宙からやってきたにゃんぼー」をパフォーマンス。ウッドベースやギロ、アコースティックギター、フルートを持ちより、大橋の周りに小さく集まるバンドメンバーたちが、陽気なリズムを奏でる。その光景を見ていると、エミール・クストリッツァ監督の映画『アンダー・グラウンド』に接した時のような、あるいは町中で偶然チンドン屋に出くわした時のような、多幸感が押し寄せてくる。大橋トリオのライブはとことんハッピーだ。

MCを挟み「Fairy」。無限の可能性があった頃に出会った妖精に語りかけるようなこの楽曲の切なくもメルヘンチックな物語が、弦もプラスされたことによって、くっきりと目に浮かぶ。

色っぽいホーンに誘われる「月の裏の鏡」。メロディーは天に昇るように上昇し、再びサビで波に揺れるように歌われる。ゆたゆたと、ゆたかに、たゆたうように進んでいく幻想的なアレンジだ。

続いて「鳥のように」が演奏される。多国籍でパワフルな楽器たちの音色に埋もれることのない、大橋の繊細でしなやかですっくと立ち上る歌声が流麗だ。大橋の楽曲はジャズテイストだったりエキゾチックだったりロックだったり様々なアプローチを仕掛けてくるが、それでも紛れもなく彼の楽曲だと観客が感受できるのは、そこに大橋の歌声が乗るからに他ならない。大橋の声が乗っかることで、彼の楽曲はポップスとしての強度を確かなものとする。

大橋の鳴らす叙情的な鍵盤に、ドラムスやギターが不穏な響きを小さく添える。すると、映画『キルビル』のテーマ“BATTLE WITHOUT HONOR OF HUMANITY”のリフが轟いた。ステージセットが左右に割れると、センターから登場したのはなんと布袋寅泰。これまでとは一転して、爆音ロックが会場を満たす。聴衆は大歓声で迎え、総立ちとなる。布袋の鳴らす重く鋭くキャッチーなフレーズが会場を鷲掴みにした。続けてあのコードストロークだけで誰もが体を跳ねさせてしまう「バンビーナ」が始まった。布袋とボーカルパートを分け合う大橋。共にギターを鳴らす大橋がとても嬉しそうに見える。父と息子といった趣さえある微笑ましいコラボだ。布袋がギターソロをとりながらステージを悠々と左へ右へと移動する。観客と共に大橋も布袋に感嘆の拍手を送った。

「僕も皆さんと同じ、大橋トリオくんの大ファンの一人なんです。初めて彼の声を聞いた時、心が震えるというよりは、心が静寂になるというか。『なんなんだ、この声は』と思って、すぐ電話したもんね」と布袋は語る。
大橋は「本当はずっと一緒にやっていたいんですが……。新曲を勢いでやっちゃおうかな」と言って、布袋と共に新曲「Embark」をパフォーマンス。一聴してキャッチーなメロディーは、布袋の印象的なギターによって、一層立体感を得る。
布袋は「大橋くん、おめでとう!」と言い残しステージを去っていった。

「クリスマスも近いのでそういう曲を」と少し息の上がった声で大橋が言うと、ドラムスのカウントがかかり「MAGIC」。温かいクリスマスソングだ。

「布袋さんの余韻がまだ抜けませんか? 僕は抜けてないです」と笑った大橋は「いつもは華やかに終わるんですが、今日はあえてしっとり終わってみようかなと思います」と語り、マイクスタンドの前に立った。「アネモネが鳴いた」だ。

この日はじめて、大橋は楽器を手にせず歌った。手を後ろに組み、直立して真摯に歌い上げる大橋は、ピアノと弦とホーンの音を背景に歌い上げる。大橋の歌唱の巧みさに改めて気づかされる。「これが最後の詩 静かに瞼を閉じるよ」という歌声に誘われて目を閉じると、やさしく強い大橋の歌声は、僕自身の内側から響いてくるようだった。歌唱を終え、大橋はステージを去った。しかしその後もバンドの演奏は鳴り止まない。大橋がいなくなった後も、世界には音楽があった。もちろん、大橋が生まれる前から音楽はあったし、彼がいなくなった後も、この世界には音楽が鳴り続くだろう。持田香織や布袋寅泰の音楽が、日本中を、そして世界を豊かに彩ったように。
しかし、大橋が去り、いま僕が思うのは、大橋にしか鳴らせない・歌えない音楽が、確かにここで鳴っていたということだ。大橋トリオの不在を寂しく思う自分がいた。
寂しく思う観客たちが万雷の手拍子で大橋の再来を望んだ。間もなく大橋はアンコールに応える。

「音楽って楽しいですね、本当に。もう一歩上の楽しみ方をしたいと思ったら、絶対やった方がいいですよ、演奏。絶対こっちの方が楽しいですから、申し訳ないけど」と語る大橋。
歌うこと、奏でること、創ることの喜びを、大橋はファンにも知ってほしいと彼は思っている。ひとりでも多くの人間が音楽を奏でるようになったら、この世界がもっと良くなるはずだと大橋トリオは信じている。ファンもみな、そう信じていから、“TRIO ECHO”を鳴らし、手拍子を惜しまないのだろう。

アンコールは「HONEY」からスタート。「僕だけは君を信じてるから 君らしく君のままで笑って 笑って傍にいて」という歌詞に励まされる。
アンコール2曲目は大橋の鍵盤からスタート、「Bing Bang」だ。ステージ上の白を纏ったメンバーがピアノのリズムに合わせて揺れている。かわいらしい人形を思わせる。温かくもどこか切ない「Bing Bang」がバンドセットでの最後の曲となった。

バンドメンバーに手を振り時にハグをして彼らを見送った大橋は一人ピアノの前に腰掛け、「大橋トリオ、まだまだ頑張ろうと思います」と言うと、いつものように「生まれた日」を弾き語った。
青と白の、夜空を思わせる照明をバックに、miccaの書いた歌詞を確かめるように丁寧に歌っていた大橋だが、「今までに起こったすべてが 私を作る材料だから 本当の私は今また もう一度生まれてくる この場所で」と歌うとき、感情の昂ぶりが伝わってきた。最後の音が鳴り止むと、ステージに掲げられた“TRIO ERA”の電飾を、少し感慨深げに、彼は見上げた。
立ち上がり、ファンの拍手に拍手で応え、深くお辞儀をし、大橋トリオはステージを去っていった。会場で発売されたパンフレット『OHASHI TRIO 10th Anniversary』の中で大橋は、この10年間を「色んなことがありましたね、嬉しいことも悲しいことも 有りがちですがとにかく駆け抜けました アルバムも12枚も作りましたしね、、正直今後何処まで続けられるだろうと心配です」と振り返ったものの、今のバンドメンバーが「あらゆる意味で最高すぎる」と素直に喜んでいた。
きっとこれからも彼は、自身の音楽への愛情によって、多くのミュージシャンを魅了し、キャラバンのように進んでいくだろう。「マイク1本コーナー」を目の当たりにした時、そう思った。「トリオ」だけどひとり、でも、一人じゃないのが大橋トリオだ。

photo: Tsukasa Miyoshi (Showcase) ※大橋トリオ
  Yuusuke Katsunaga ※大橋トリオ・布袋寅泰/持田香織
text: Kazuaki Asato(DE COLUM)

第1幕
1. はじまりの唄(弾き語り)

第2幕
2. SHE
3. Baumkuchen
4. マチルダ
5. バンドメドレー
摩天楼バタフライ ~ GOLD FUNK ~ CLAMCHOWDER ~ Happy Trail ~ 僕らのこの声が君に届くかい

第3幕
6. トリドリ
7. A BIRD
8. キヲク(持田香織)
9. 静かな夜(持田香織)
10. 宇宙からやってきたにゃんぼー
11. Fairy
12. 月の裏の鏡
13. 鳥のように

第4幕
14. BATTLE WITHOUT HONOR OF HUMANITY(布袋寅泰
15. バンビーナ(布袋寅泰)
16. Embark(布袋寅泰)
17. MAGIC
18. アネモネが鳴いた

アンコール
1. HONEY
2. Bing Bang
3. 生まれた日(弾き語り)

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■ニューアルバム情報
タイトル:未定
発売日:2018年2月14日
CD+DVD
品番:RZCD-86479/B
価格:¥4,700 (tax out)
CD+Blu-ray
品番:RZCD-86480/B
価格:¥5,000 (tax out)
CD only
品番:RZCD-86481
価格:¥3,000 (tax out)

収録内容
– CD –
・SHE
・鳥のように
他、収録予定
– Blu-ray / DVD –
・MV
・ライブ映像
収録予定

ECサイトリンク
amazon  http://amzn.to/2zBxUl8
TOWER RECORDS http://bit.ly/2AqLr2P
HMV http://bit.ly/2zQGJvJ
楽天BOOKS http://bit.ly/2zQYXxh

■セットリストアルバム
タイトル:『ohashiTrio 10th ANNIVERSARY SPECIAL CONCERT “TRIO ERA” 』
配信日:2017/12/9(土)
【iTunes】https://itunes.apple.com/jp/album/id1318582066?app=itunes&ls=1
【レコチョク】http://recochoku.com/a0/ohashitrio_trioEra-setList/
【mu-mo】http://q.mu-mo.net/of/ohashi- trio_171209/
【mora】http://mora.jp/package/43000002/ANTCD-25957/
【AWA】https://s.awa.fm/album/fd122c4d988865632868?t=1512074511
【AppleMusic】https://itunes.apple.com/jp/album/id1318582066?app=apple&ls=1
【LINE MUSIC】https://music.line.me/launch?target=album&item=mb0000000001580b00&cc=JP
【Spotify】http://open.spotify.com/album/6NFiq90DMGdQ6cUQYnFmfw

■ツアー情報
「ohashiTrio HALL TOUR 2018」
2018年3月30日(金)千葉・千葉市民会館大ホール  開場18:00/開演19:00
2018年4月6日(金)鹿児島・かごしま県民交流センター 県民ホール 開場17:30/開演18:30
2018年4月8日(日)福岡・福岡市民会館 開場17:00/開演18:00
2018年4月12日(木)兵庫・神戸文化ホール中ホール 開場18:00/開演19:00
2018年4月14日(土)広島・JMSアステールプラザ大ホール 開場17:00/開演18:00
2018年4月19日(木)長野・キッセイ文化ホール(松本文化会館)中ホール 開場18:00/開演
19:00
2018年4月21日(土)新潟・新潟市音楽文化会館 開場17:00/開演18:00
2018年4月27日(金)京都・ロームシアター京都サウスホール 開場18:00/開演19:00
2018年5月6日(日)宮城・若林区文化センター 開場17:00/開演18:00
2018年5月11日(金)北海道・道新ホール 開場18:00/開演19:00
2018年5月25日(金)東京・NHKホール 開場18:00/開演19:00
2018年6月2日(土)愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール 開場17:00/開演18:00
2018年6月10日(日)長崎・とぎつカナリーホール 開場17:00/開演18:00
2018年6月14日(木)石川・石川県立音楽堂邦楽ホール 開場17:30/開演18:30
2018年6月16日(土)大阪・NHK大阪ホール 開場17:00/開演18:00
チケット料金
席種:全席指定 ¥6,800(税込)
※開場/開演時間に関しましては、諸事情により変更になる可能性もございます。ご了承下
さい。
※年齢制限:3歳以上よりチケット必要 3歳未満は入場不可

チケットに関してはオフィシャルサイトをご確認ください。
http://ohashi-trio.com/
■大橋トリオ オフィシャル情報
WEBSITE: http://ohashi-trio.com/
Facebook: https://www.facebook.com/ohashiTrio/
Twitter:https://twitter.com/ohashiTrio
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