アルスマグナが作る最強のエンタメ空間! プロ意識が次元を超える瞬間を見た『龍煌祭~学園の7不思議を追え~』ライブレポート


コスプレや2.5次元と聞いて、人々は何を想像するだろうか。実在しない誰かになりきるコスプレ、3次元の現実でもなく2次元のアニメでもないどっちつかずの2.5次元。ふわっとした娯楽のなかに、それらを納めている人も少なくないのかもしれない。しかし、その考えはアルスマグナに出会うと180度改めさせられることになる。
2.5次元コスプレダンスユニットを自称する彼らは、プロ意識の塊だ。際立ったキャラクター設定ばかりフィーチャーされる5人だが、本当に注目されるべきはそれに根付いた心意気。11月24日(土)、Zepp Diver City Tokyoで開催された『龍煌祭~学園の7不思議を追え~』は、4人の高校生と先生が創りあげた最高のエンターテイメントだった。

時計が定刻を告げると照明が落ち、古畑●三郎に扮装した神生アキラが登場した。そのモノマネに笑わされたのもつかの間、「永遠シンデレラ」によりステージは封を切られる。舞台の奥から、各々が似合う探偵の格好をしたメンバーが登場。『龍煌祭』ならではの衣装に、観客はすでに大盛り上がりだ。その盛り上がりに甘んじて、見掛け倒しにならないのがアルスマグナのすごいところ。1曲目からメリハリのあるキレキレのダンスで会場中を魅了した。「ひみつをちょーだい」では、メンバーの動きに合わせて6色のサイリウムがキラキラと揺れる。お客さん・演者を超えた、文化祭を作るチームメイトという一体感が会場を満たした。





榊原タツキの「みんな龍煌祭へ、ようこそ!」を皮切りに和やかなMCタイムへ。今回のテーマである“学園の七不思議”について、ストーリーが進められていく。泉奏は七不思議の定義などの長台詞を披露し、観客からは感嘆の声が漏れた。
その後も、各々の楽曲を巻き込みつつストーリーは続いていく。朴ウィトがチアリーダー姿で「Ready to Dance」を披露したかと思えば、泉と九瓏ケントは「フェスティバル・オブ・テラー」で妖艶に舞う。アキラがアルスロイドとの掛け合いで、コミカルに曲を歌いあげたのは「記憶ノスタルジア」だ。アルスロイドのパネルの口が外れたり、はたまた頭が外れたり。ハプニングに見せた演出に、会場はドッと沸いた。タツキは相方のコンスタンティンと共にメルヘンなナンバーの「ふたりはミルクティー~& You too love~」を。女子顔負けの愛らしい姿に、会場からはしばし「かわいー!」とトキメキの声が連なった。
7不思議のパワーにより、何度もループが繰り返されたのは「たまんねぇぜBABY!」だ。パラパラを基軸にしたダンスは、角度までばっちり揃い見ているだけで気持ちいい。サビには抜群のタイミングで、メイトの声が「ふっふー!」と響いた。ループの不思議を解除するには、シンデレラ(アルスマグナにとってはメイトちゃん)を満足させることが必要ということで「君こそ☆マイアイドル」をパフォーマンス。曲中の公開ラブレターは“いつもは明るいのに落ちこんでる彼女を元気づける一言”というテーマで行われ、胸キュンワードの連発に叫び声にも似た歓声がZeppにこだました。ストーリーパートのラストを飾ったのは「Anyway Sing」だ。少しでもメイトに近づこうと、メンバーはステージを端から端まで歩きまわる。一人ひとりを捕える視線は本当に幸せそうで、このツアーで会ったすべてのメイトの顔を思い出してるようだった。


ステージ上での早生着替えを挟み、ダンスナンバーのボカロメドレーに突入!「サンバdeわっしょい!ボーカロイドVer.」を皮切りに、「チョークスリーパーまりこ先生」や「Smile again」などを魅せつける。テンポの速い振付が細かい曲も、ゆったりとしたより細部の詰めを試される曲も、しっかりとパフォーマンスしきってしまうのは、さすがアルスマグナといったところだろう。そのダンスのなかでも、各々のキャラに添ったディティール表現をしているのだから、本当にプロ意識の塊だ。

メンバーの自己紹介を挟み繋がれたのは、アルスメドレー。爽やかな「Letter」や賑やかで楽しい「旅立つ君へ」など9曲を披露。「~Joker~先生の言うことぜーったい♡」では、アキラの掛け声に合わせ「絶対!」のコールが会場中に響いた。その後も、「カルチェ」「ボクはつづく」とアルスマグナはラストスパートをかける。ラストソングとなったのは、クラップが曲を盛り上げる「High Five ~Type A.R.S~」だ。朴がひたすら「クラップ!」と煽り、会場はそれにこたえる。メンバー、メイト一丸となったコールでライブを創りあげ本編は幕を下ろした。

5人がステージから消えたのもつかの間、あっという間にアンコールの声が会場を埋め尽くす。影アナのストーリーを挟み、ツアーTシャツに着替えたメンバーが登場した。アキラの「風呂はいりてー!」のセリフが引き寄せたのは、「フロリダ」。タツキのブレイクダンスがさく裂し、彼の小柄さを感じさせないステージングが繰り広げられた。「Eureka moment」にはクロノス学園の生徒もかけつけ、この日1番のケチャが巻き起こる。色とりどりのサイリウムと共にタオルが宙を舞い、絶景を生み出していた。「みんなとだったら、どんな険しい道も超えていける」という思いをこめて導かれたのは、「果てなき道」。アキラが紡ぐ<果てなき道を生きよう>という歌詞は力強く人々の心に訴えかける。<進め>と、指さす視線の先に映ってるのは果たしてどんな未来なのか。未知だが希望しか感じない空気感を作りだし、お決まりの「グッ」「ピース!」でライブを締めくくった。

コスプレで2.5次元で永遠の高校生(と先生)。それは何も知らない人から見たら、コアファン受けのユニットに映るかもしれない。個性の強いキャラクター性も、もちろん人気を裏付ける大切なひとつの要素だ。しかし、彼らはその色に依存しない極上のエンターテイメントを巻き起こしていた。それは、彼らの「やりきる」というプロ意識の表れ以外の何ものでもないのではないだろうか。『龍煌祭~学園の7不思議を追え~』は映像商品化も決定した。彼らの本気を見ずに、エンターテイメントは語れない。

写真:プランチャイム提供
取材・文: 坂井 彩花