【特集】アリス九號. 11th ALBUM『GRACE』発売記念インタビュー /「このアルバム1枚で1曲、という感覚で捉えてもらってもいい」

11月2日、11枚目のフルアルバム『GRACE』をリリースしたアリス九號.。

「このままではヴィジャル系というジャンルは滅んでしまう」と感じた沙我 (Ba)の、ヴィジュアル系シーンに対する強い危機感の元、今作の制作はスタート。
古きよきヴィジュアル系のサウンドと共に、アルバム全編が崖っぷちにいるような緊迫感に包まれながらも、最後は、これまでアリス九號.が築き上げてきた煌びやかなサウンドと歌で、”今を生きろ”と光を照らす「Grace」。

今のヴィジュアル系シーンに一石を投じる作品となった今作について、5人に話を聞いた。

また、後半では5人が思うアリス九號.の“神曲”についてそれぞれが語り、さらに2022年のソロ、ユニットプロジェクトの裏話もたっぷり披露してもらった。

 

◇◆◇◆ Interview   ◆◇◆◇

 

ーー11thアルバム『GRACE』が完成しました。まずはジャケットアートワークに関してなのですが、ヴィジュアル系ではあまり見かけない雰囲気だと感じました。

将 (Vo):そうですね。HIPHOPにはある表現なんですけど、芸術においてはメタファー(隠喩)が重要だと考えていて。「これは何を表現しているのか」が点と点で繋がったらいいなと思っていまして。最初はダークで緊迫感のあるアルバムになる予定だったんですが、表題曲の「Grace」が出てきた時点で、空気感が変わったんですね。漆黒の中から光に向かって駆け抜けていった結果、美しい景色に辿り着いて。お花畑の中で爆走していた車が急停車するような絵が頭に浮かんだので、それをアートワークに落とし込みました。車のメタファーはメンバーである、というのはお伝えしておくので、「この花は聴いてくださるみなさんなのかな」とか、色々と想像しながら楽しんでいただけたらと思います。

ーー停止するまで車が爆走していた理由は?

将:「Funeral」イントロの高揚感から始まる爆走モードのアルバムなので。今作はNaoさんのドラムのキレがすごいんですよ。曲を聴いて、沙我くんはNaoさんに対してスパルタだなと思ってたんですね。でも、リハーサルでNaoさんはそれを普通に叩いてたから。

沙我:じゃあ、もっといくか。

Nao (Dr):いやいやいやいや。

将:そのドラムのキレとか、メンバーながら凄いなと思っちゃったんですね。Naoさんのソリッドなドラムの疾走感が車に繋がったんだと思います。

ーー車のナンバープレートはバンド結成日とか色々意味がありそうですが、この通常盤の時計にはどんな意味があるのか、ヒントだけでも教えていただけますか。

将:日常の中で時間を気にするシチュエーションって限られていると思うんです。そういったメタファーを込めています。今僕たちのライブは<LAST DANCE>と銘打った中で進行しているので、そういった緊迫感がある中で自分たちは音楽に向き合っている、というテンション感も表現しています。FC限定豪華盤には月の満ち欠けをデザインしているんですが、それもあるメタファーを隠しているんです。昔から僕は先輩たちの、LUNA SEAだったら「END OF SORROW」の、外国人女性のブレた2枚の写真にはどんな意味があるんだろう、とか考えるのが好きだったんですね。そうやってこのジャケットもみなさんに味わっていただけると嬉しいです。

ーージャケットのアートワークを動かした「Grace」は、アルバムのリード曲として<LAST DANCE ACT.1「Funeral No.999」>公演で初披露、Music Videoも先行公開しました。こちらの曲をリード曲に選んだ理由は?

将:今作に関しては、プロデューサーやA&Rといった部分でも沙我くんの美意識とジャッジに委ねる形でメンバー5人が納得して進行していったんですね。その中の会話で、「Grace」を沙我くんが作った時点で「これがリードでしょう」と言っていて。

Nao:言ってたね。

沙我:いやもう、これができちゃったらこれしかないかなって。でも今は、これ出すの早すぎたかなっていう想いが…(苦笑)。

ーーええーっ!

沙我:アルバムの中で異色なんですよ、「Grace」は。1曲だけ浮いてるんですね。浮いてる曲をリードにしちゃったんです(苦笑)。曲ができた時“アルバムの顔だよ”という雰囲気を出してたんですよ、この曲が。だからそうしたんですけど、今となっては、これでよかったのかなという想いが…。曲にもMusic Videoにもいろんなネタが詰まってるんで、リード曲で先にネタバレしすぎたなと思っちゃって。今になって、もうちょっと隠しとけばよかったなという欲が出てきました。LUNA SEAの『IMAGE』というアルバムがあるんですけど、最後に唯一明るい「WISH」という曲が入ってるんですね。まるでその「WISH」をリード曲にしちゃったぐらいの”間違っちゃった感”が、今僕の中に3割ぐらい出てきちゃってて。曲はアリス九號.らしいんですけど、決してこういうアルバムではないので。

ーー「Grace」を聴いた後、リリースされたアルバムを聴いたらみなさん驚いちゃうんですかね。

沙我:「あれ?」って絶対思うでしょうね。僕だったら”「Grace」みたいな曲が半分ぐらいは入ってるのかな”って想像するから。そう思いつつ聴いてたら「あれ?最後だけ?」って(笑)。そういうサプライズになりました。

ーーアルバム自体、どんなものができたと感じていますか?

Nao:作る時に、「悔いが残らない作品を作ろう」という話をみんなでして。自分的には人生最後のアルバムを作るつもりで、悔いを残さないためにも、悔いが残りそうなぐらい機材を買って(一同笑)、限界に近いところまで突き詰めてかなり時間を費やしてやったんで、本当に悔いは無いです。自分がやれる限りのプレイができた。それで、新しい自分の可能性、切り口も見えてきました。

ーー作品全体としてはどんな手応えを感じていらっしゃいますか?

Nao:沙我さんはさっき色々言ってましたが、僕は「Grace」がリード曲って、ファンにとっては安心できる薬みたいな1曲だからよかったと思ってます。暗いだけのバンドではないんでね、俺たちは。アルバムの最後の曲で、これまで18〜19年このバンドをやってきて、”変わってないところはこういうところだよ”と捉えてもらえればいいんじゃないでしょうか。

虎 (Gt):僕はこのアルバム、最後を「Grace」で締めたところがよかったと思います。これがなかったら、”今までとは違う特殊なアルバム作った感”がより一層引き立っちゃうと思うんで。これがあったことで、アリス九號.のアルバムになった気がしますね。ただ、僕は全体的に暗いアルバムというイメージは無いんですけどね。今までもこういうテンション感の曲はあったから。そこの要素、今までも持ってた暗い部分の要素を強めたアルバムというだけで、根本的なところのアリス九號.は変わってないんですよ。暗い要素を強めて、昔の諸先輩方が作ってたアルバムに近い聴き応えのある作品になったかなという気はしますね。

ーーアルバム作品として“圧”がありますよね。昔の先輩方のアルバムの作り方がそうだったように。

虎:特に今作はシングル曲の寄せ集めじゃないから、こっちもアルバムを作った感があるんですよ。シングル曲ってアルバムを作る時に邪魔で。シングル3枚あったらどうしてもそれ以外のところを埋めるだけになりがちで。今回はシングル曲が無い分、アルバム感が出てるのかなって気がします。

ヒロト (Gt):僕も通して聴いた時、暗いとは思わなかったんですよ。歌詞を追っていくと暗めと捉えられるワードは多いんですけど。最後にマスタリングに立ち会って、通して聴いた時、自分は「Grace」でアルバムの印象が変わるとは思わなかったんですよね。今までのアリス九號.らしさからは一旦離れて、”とにかくクリエイティブな音を創ろう”というのが当初のアルバムのスタート地点だったんですね。で、前半タームは「デカダンス」というテーマがあったから暗めの曲ができていって。だけど、その途中からその当初のコンセプトからはズレていって、結果的にこういう形になった。アリス九號.って、結局将さんの声なんだなと思いましたね。将さんが歌うと、どんなに地を這うような曲でもどこか煌めいてくる。だから、僕はこのアルバムも暗く聴こえなかったんだと思います。

ーーでは将さんはいかがですか?

将:僕は「三国志」で燭(しょく)という国の視点で読むのが好きなんですね。「項羽(こうう)と劉邦(りゅうほう)」は劉邦が好きなんです。共通するところは、君主が無能なところには有能な人が集まってきて、君主があまり出しゃばらない分、周りの人が大暴れする。そういうのが好きなんですね。だから僕は出しゃばるのが好きじゃなくて。周りを活かす方が好きなんです。それが結果的に、今までのアルバムではそれぞれの個性が出るよう、良かれと思って配置していたところがちょっとオムニバス感になってしまって。

ーーEP『Medley』がまさにそうですよね。

将:そうなんです。これはこれで個性、これはこれで面白い、多様性、ダイバーシティ感を大事にしてやっていくと、全体が集まった時に、いい感じなんだけど幕の内弁当になってしまうんです。クリエイティブは、超個人的なものであり排他的なもので、それを狂気的にやりきったものじゃないと、一流のものは創れないんですよね。

ーークリエイティブな創作を重視するなら、『Medley』とは真逆の考え方をしないとダメだということですね。

将:そう。『Medley』があったから、逆にこういった作品に振り切るタイミングにもなったと思います。クリエイティブで攻めるには、超個人的なところでディープに突き詰めていく技量と「俺は絶対に間違っていない」という俺様な精神性が無いと攻めきれないんですね。そういうところで、今作は沙我くんの比重が大きくて。凄く沙我くんに頼らせてもらった訳です。

ーークリエイティブに振り切ったものを突き詰めて創作するための手法として?

将:ええ。今までのように民主主義で「俺はこれがいいと思う」、「ああ~。そういう考え方もありだよね」でやってしまうと、よく分からない幕の内弁当になってしまう。僕もマスタリングに出席したけど、発言してるのは沙我くんだけなんですよ。でも、それが素晴らしいことなんです。僕の感性だと「もっとこうなんじゃないか」と思うこともありました。でもそれって、クリエイティブなところを追求する上では”ノイズ”なんですよ。一度クリエイティブを突き詰めて、「これはなんなのか」というものを世に出さないと、これだけ世にエンタメのコンテンツが溢れかえっていると、よく分からないものって淘汰されるんですよ。俺らは1990年代に「バンドかっけー、バンドやろうぜ」「バンドやってる俺、かっけー」と自信を持って言える時代があって、バンドをやりだした。2020年代、これを聴いたら「メイクしてバンドやるのってかっけー」って思える。そういったメッセージ、手紙みたいなアルバムができたんじゃないかなと思っています。

ーーでは、今作のクリエイティブを引っ張った張本人である沙我さんはいかがですか?

沙我:最初はもっとボリュームがあって、曲としてもうちょっと遊びがあるアルバム……変態的な曲があったり、「Grace」のような優しめな曲があったりするイメージはありましたけど、結果的にはこの10曲でまとまったなと、完成して思いました。最近だとこういうアルバムって絶滅危惧種かもしれないですけど。全曲シングルのような、コンピレーションアルバムみたいなものが今の主流だから。でも『GRACE』というアルバムはそれとは真逆で。一つの空気があって、それに沿って流れていく作品だから。そこは昔ながらのアルバムの作り方なのかもしれないです。だから、簡単にいうとこれ1枚で1曲という感覚で捉えてもらってもいいかな。曲間もほぼ無い感じにしてるし。

ーーバンドのアルバムとしてはどんな位置付けで考えていった作品ですか?

沙我:アリス九號.であることはほぼ意識しないで作ったんですよ。それよりも、ヴィジュアル系シーン全体を考える中で、シーンが忘れている大事なもの、失われつつあるもの、残していった方がいいもの。そういうことを考えながら作ったんで。

ーーアリス九號.から今のヴィジュアル系シーンに対するアンチテーゼですか。

沙我:いや別に、このシーンにめちゃめちゃ愛情があるからやったとかではないんですよ。昔はヴィジュアル系って若者が聴く音楽だったのに、気づいたら若者は聴かない演歌のような存在になってて。これでいいのか、と。このままだと本当に滅ぶなと思ったのがきっかけなんですね。それで、昔みたいなアルバムだなと思われるかもしれないけど、でもそこを取り戻さなきゃいけないんじゃないの、というのが、僕が今作で一番言いたいことです。だからといって、ヴィジュアル系=こういう音楽じゃないとダメ、と言ってる訳ではないんで。これに対して他のバンドが「いや、俺らが思うヴィジュアル系はこうだよ」という感じで。

ーーシーン全体が動いていってくれたら。

沙我:面白いですけどね。だから、要は死の淵から這い上がるような気持ちでみんなやっていかないと、このままだとヴィジュアル系は滅びるよ、ということです。

ーーその死の淵から這い上がる感覚は、アルバム全体の歌詞にも表れていましたよね。

将:だから、僕って正直者だなぁと思いました(微笑)。歌詞に包み隠さず本当のことを書いてますから。でも一貫して僕が伝えたいのは、メメント・モリ=死を想うからこそ今がある。だから今を生きろ、というものです。それがコアにあるから、こういった歌詞になったんだと思います。なので、アルバム冒頭は「Living Dead」、「Funeral」と死の境地にいるところから始まるんです。

 

▼アリス九號.「Funeral」Music Video

https://youtu.be/0B_3-gMLHfE

 

ーーそこから死を意識しながらアルバムは進行していくんですよね。

将:昨年、死をネガティブに捉えるのはやめよう、死は状態でしかない、といった内容の本を読んだ影響もあるのかもしれませんが、沙我くんが「界」で “般若心経”を持ってきたところにも感化されているかもしれないですね。

ーー「界」は虎さんの曲ですが、般若心経を入れて欲しいとオーダーしたのは虎さん?

虎:いや。あれは沙我くんが付けたんですよ。でも、凄いなと思いましたよ、この発想は。しかもいい具合にハマってたんで気に入ってます。この発想、凄くないですか? お経を入れたくてもなかなか入れる勇気は出ないと思いますよ。ヴィジュアル系ってどうしてもキリストに寄りがちじゃないですか?

ーー確かに。

虎:それをお経に寄せたのがいいなと思いましたね。和のヴィジュアル系はいるけど、お経までは使ってない。なぜ今まで誰もやらなかったのか、と。カッコいいですよ。

ーーしかし、歌詞は “彼岸の花”はよかったんですが、“教会”も出て来るんですよ。

将:ホントだ! 般若心経なのに教会。これがミクスチャーということかな。

沙我:本来なら寺だよね、そこは。

Nao:和洋折衷。

ーーちゃんとアリス九號.してますね。

沙我:僕が思うヴィジュアル系の良さ、怖さって、こういうことなんですよ。自分でお経を思いついた時「いや、お経かよ」と思ったんですよ。だから誰もやんなかったんだと思います。自分が今まで見てきたヴィジュアル系シーンには「これすげーな」とか「これは無いだろう」というのがたくさんあった。普通のロックバンドからしたら「ネタじゃん」って言われようが、そのネタを全力でやりきる。それがヴィジュアル系のすごさだと僕は思ってたので、勇気を持って入れました。カッコつけたいだけの自分だったらもちろんお経は絶対に入れないんですよ。だけど、お経入れなかったら普通ですからね。

ーーお経を入れた「界」はすでにライブでは破壊力満点のキラーチューンになっていますし、アリス九號.はつくづく懐の大きいバンドだと思います。

沙我:踊ったりするバンドですから(一同笑)、お経ぐらいなんともないです。

ーーそしてアルバムラストを飾る「Grace」。こちらは間違いなく今後のアリス九號.の神曲になっていくナンバーだと感じたのですが。

沙我:自分はこれを作って、俺はちゃんとアリス九號.らしさを分かってたんだなって安心したんですよ。これまで、アリス九號.には “らしさ”は無いのかなと思ってて。

ーー沙我さんはずっと仰ってましたね。

沙我:そう。軸になるものが無いなっていうことを常に言ってたんですが、でもこうやって「Grace」を聴いてみると、「これだよな」って。これが “らしさ” だよなって感じた。

Nao:僕はすでに神曲なんじゃないかなと思ってますよ。結成から成人した今の令和アリス九號.がやるアリス九號.じゃないですかね、この曲は。昔じゃできない。

ーー虎さんはどうですか?

虎:ギター、ムズいんすよ。意外にも。フレーズは沙我くんが考えたものですけど。楽曲だけ聴くとそう感じさせないんで、安心してファイルを開いたら「うわっ、ギタームズ!」って。まさかのムズさで、びっくりしましたね。

沙我:「Grace」のMusic Videoは武瑠(ex. SuG / akubi Inc.)チームが撮ってくれたんですけど。「デザインに使いたいからコード進行を書いてくれ」と言われて。

将:言ってた言ってた(微笑)。

沙我:超面倒くさいなと思ったけど、武瑠に言われたから1時間ぐらい頑張って、コード譜書いたんですよ。そしたら「なんすかこれ。使えない」って言われて(一同笑)。頑張って書いたのに、複雑すぎて「すいません。これ使えません」って。

虎:コード進行が複雑で細かいんで、覚えるのも大変なんすよ。

ーー組曲みたいですもんね。構成が。

虎:ギターは最初から最後まで同じ箇所が無いんですよ。コードも普通の展開ではないので。この6分間、バラバラなことを暗記する感じなんです。聴いて感じるよりも遥かに難しい。そこは衝撃を受けましたよ。アルバムでは一番難しい楽曲です。曲はどこを切り取ってもアリス九號.っぽさを感じるし、「Grace」っていう言葉自体、アリス九號.っぽいですよね。

ーーヒロトさんはいかがですか?

ヒロト:僕は、アリス九號.っぽいかどうかは後々分かることだと思います。「春夏秋冬」もそうでしたからね。

ーー「Grace」の歌詞は「Living Dead」や「Funeral」とは違う空気感を感じましたが、どんなイメージで書いたんですか?

将:走馬灯。

ヒロト:あ!曲のイメージ、僕もそれです。

将:だよね? “少年は笑った”の少年、主人公は僕らで。IではなくWeです。

ヒロト:9月9日のライブの時、そのイメージで歌ってたのが分かった。

将:あの日は、泣いちゃダメだって思ってたんですけど「Waterfall」で涙が止まらなくて。ここで泣かない方がいいと思ってたのに曲に泣かされちゃったから、あの日の「Grace」は真っ新な気持ちで、走馬灯を思い浮かべて歌いました。ボーカルは、沙我くんに楽器としての自分の喉、声が一番鳴るところ、無理したり変なチューニングをしないで一番身体が鳴るところをサジェストしてもらって歌いました。

ーー将さんと沙我さんがここまでAメロから掛け合いで絡んで歌うのも初ですよね。

将:沙我くんが1コーラス作ってきた時点で「バリバリ歌おうかな」と言っていて。10年前だったら僕は嫌だったと思うんです。でも沙我くんて、TD(トラックダウン)とか立ち会うとよく分かるんですけど、自分が目立ちたいからとか、そういった理由でやってないんですよ。だからこの歌も僕の歌に対してここはサブボーカルっぽく、こっちはコーラスっぽいものを、とか、全部をトータルで考えてクリエイティブに必要不可欠なところを担ってやっているんですよ。あとコーラスについても、自分の声でハモるよりも沙我くんがハモってくれた方が音楽としていいんですよね。だから声が交互に聴こえてくる感じとか、今はいいなと思います。バンドってものに今まで囚われすぎてたのかもしれないですね。ダンスボーカルグループって、当然のように交互で歌ってたりしますから。“5人バンド”という呪縛に囚われてないのも、今のアリス九號.の良いところじゃないかなと思います。ボーカルは一人、ということに拘っていたら、これは歌えませんから。

沙我:そもそも一人でこれを歌うのは無理ですから。「CASTLE OF THE NINE」は全員で歌ってるし、俺がコーラスを歌ってるのもファンは聴き慣れてるだろうからもういっかと思って。アルバム全体的に、今回は僕がセカンドボーカル的に歌ってるところが結構あるんですけど、将くんのボーカルをよく理解してる人は、「これは違うな」と感じるメロディーを僕が担って歌ってることに、聴いたら気づくと思います。でも「こいつ歌いすぎ、出しゃばりすぎじゃね?」っていう人はいると思います。でも今のアリス九號.はこうだから。

ーーそこも振り切って。

沙我:ええ。『VANDALIZE』、『GEMINI』というアルバムが僕らの核だというところから、もう一度その核となるものを、あれらを作った当時のテンションで作ろう、という話を最初してたんですね。それで作っていくうちに、このアルバムの解釈としては『VANDALIZE』、『GEMINI』、『GRACE』の三部作と思われてもいいかなと思いだして。

ーー『GEMINI』からもう10年以上経ちましたが、実は繋がっていると。

沙我:それに気づいてくれたら嬉しい。ただね、そこも「Grace」のMusic Videoで「the beautiful name」の匂いを出しすぎちゃったなと思って。

ーーMusic Videoにしか出てこないイントロのパートがヒントになっていますね。

沙我:あそこは僕が作ったんじゃなくて、武瑠チームが作ったんですよ。音源には無いものを武瑠チームの解釈で入れちゃったんです。

 

▼アリス九號.「Grace」Music Video

https://youtu.be/Nj0I5b7TzDY

 

ーーそこまで深掘りして、この曲の秘密にしていた部分まで感じてくれていたところが、何よりも嬉しいですね。

沙我:嬉しいけど、出しすぎちゃったかなと(笑)。

ーーではせっかくなので、ここでみなさんが思うアリス九號.の神曲を1曲ずつ教えてもらえますか。

Nao:やっぱり大作感という意味では「GEMINI」シリーズの3曲。

虎:一番好きなのは「Phoenix」かもしれない。楽曲に対してのメロディーの付け具合が単純に好き。何回でも聴いていられる。

ヒロト:僕は「ブループラネット」。純粋にいい曲。メロディーがいい。最近Music Videoを見てたらライブみたいで。その映像も含めて、今のテンション感とは違いますけど、バンドの歴史という意味で考えたら神曲なんじゃないかなと思います。

将:最近、すごくお世話になっている方の結婚式で、余興で新郎から頼まれて歌ったんですけど。

Nao:マジすか!請求書書かなきゃ。

将:あはははっ。「the beautiful name」を歌ったんですけど、歌う前と後で、テーブルの周りの人の対応が変わって。歌い終わってテーブルに戻ったら「めちゃくちゃいい曲ですね」ってスタンディングオベーションで褒めてくれて。音楽やバンドを知らない人にもこの曲は「おぉー」と思わせるパワーがあるんだなとその時に思ったのでこの曲で。

沙我:色々あるんですけど、今のモードで再構築してみたいのは「CASTLE OF THE NINE」。EDMを5人で歌ってるんですが、あれを漢字一文字でいうと “漢(おとこ)”。そういうテンションで作り直して、演奏しながら歌いたい。これ、凄くないですか?

将:俺、ただただ暇なだけにならない?カスタネットぐらい叩く?

沙我:なんか考えるわ。

ーーそれでは、この後は今年行ったユニット、ソロ活動を振り返って気になったところを質問していきたいと思います。まずNaoさんと沙我さんがやられていたTHE ALTERNATIVEに関して。

今回はなんといってもNaoさんがアコギの弾き語りでカバーした曲、クセが強すぎて「アナポイ(ANOTHER POISON)」と別名で呼ばれるようになっていった反町隆史さんの「POISON〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜」についてです。なぜこの曲をカバーしようと思ったんですか?

Nao:なんでだろう。沙我さんに「POISON」歌おっかなって言ったら「古っ!」って言われましたけどね。あははっ。

沙我:でも江ノ島でやったTHE ALTERNATIVEの最終公演は、Naoさんの歌が神懸かってたんですよ。

Nao:ぎゃはは。

沙我:神が降臨してて、外の夜景も綺麗だなと思ってたら、歌ってる途中にパトカーまで通り過ぎて(一同笑)。いろんな意味で神懸かってました。あれはすごかったよね?

Nao:いろんな条件が重なって、場内が盛り上がったんですよ。

ーークセが強いカバーになった理由は?

Nao:自分が歌いやすいようにしたら、ああなったんです。ヒロトさんがやってるツイキャスの番組に出た時に色々弾き語りの練習をしてて。そこでなんとなく歌ったのがきっかけだったと思います。そこから練習を重ねて、THE ALTERNATIVEのツアーでどんどん成長していった感じですね。

ーーその成長の勢いが止まらず、先日はヒロトさんと虎さんによるプロジェクト・PROTOTYPE+のツアーに乱入!

Nao:はい(笑顔)。よく考えたらウチのメンバーは沙我さんしか聴いてないなと思って。

ーー二人に聴かせるために行ったんですか?

Nao:うん! 俺の集大成を聴いてもらおうと思って、PROTOTYPE+の熊谷公演まで行きました。

ヒロト:あと一人聴いてない人がいるから、まだ乱入があるってこと?

Nao:そうだ!将さんにも聴いてもらわなきゃ。

将:ヒロトがインスタで(熊谷公演のNaoの歌唱を)アップしてたのを観たけど(微笑)。

ーーいえいえ、パンチある生歌をNaoさんがお届けに行くと思いますから、将さんは楽しみに待っていてくださいね。対して、PROTOTYPE+では虎さんがEvery Little Thing、浜崎あゆみさんのカバーをお届けされていました。この選曲は? avexの歌姫たちが好きなんですか?

虎:時代っすよ。誰でもこの年代は好きだったでしょ? CD持ってたでしょ?

ーー虎さんはCD持ってたんですか。

虎:持ってますよ〜。みんな買ってたでしょ? 俺も買ってましたよ、親の金で(一同笑)。

ーーステージでカバーを披露した理由は?

虎:いや、別にやりたくはなかったですけど。

ーーヒロトさんのリクエストですか?

ヒロト:そういう訳ではないです。MCの流れでそういう話が出て、「じゃあ次やる?」というのでELTを歌い出して。浜崎あゆみは、9月9日のアリス九號.のワンマンでアフタートークショーの時に、流れでそのワードが出たのかな?

虎:そう。で、「次歌うならあゆかな~」ってヒロトが言うから。

ヒロト:そうしたら、本当にやることになった。

虎:カバーした曲は、バンド演奏しやすいものから選んだ感じです。だからあゆの曲は知らなかったし。ELTもあんま知らなくて。ELTは俺よりも親が好きで聴いてたんですよ。だから家にCDがいっぱいあったんです。

ーー虎さんは女性の曲、歌うのが好きなんですか?

虎:いいや。女性ボーカルの時代だったからですよ。逆にファンが男ばっかだったらこんなことやってないですから(きっぱり)。自己満にならないようにするために、すごく大事だと思うんですよ、こういうところって。

ヒロト:この虎さんのプロデューサー的視点がすごくPROTOTYPE+を引っ張ってくれて。そこでついたあだ名が”親方”です(笑)。

虎:どうせやるなら、来てくれるお客さんの年齢層を考えて、一番盛り上がる曲をやった方が喜ぶじゃないですか。

ーーさすが親方ですね。集まったファン、その世代の人たちが聴いて一番喜ぶだろう曲をわざわざ選んでのあの歌唱だった訳ですね。

虎:そんなこと考えなくていいんなら、俺はSOUL’d OUTとか歌っちゃいますよ。でも、それは自己満でしかないですからね。

ーーそちらの虎さんも観たい気もします。そして、将さんは初の試みとして個展をやられました。その際、トークゲストとして涼平さん(MIGIMIMI SLEEP TIGHT)を呼ばれていましたが、なぜ涼平さんだったんですか?

将:お互い文系だから波長が合うんですね。涼平とは虎と同じぐらいの付き合いで、理論的でタスクを切り分けて話せる人と話す方が俺は楽なんですよ。個展をやったのは、俺だけ一人だったので、だからといってカバーライブをやるのは嫌だったんですよ。音楽をやるならこの五人でやるのが一番ですから。で、自分から歌を取っ払ったら、ずっとアートディレクションをやってきたので、アートと歌詞の融合が今僕のできることだなと思って。自分の歌詞を素材にコラージュして、一つのアート作品として仕上げて。それをもって個展を開き、歌は一曲も歌わない、ということに拘ったものを開催したんです。一つ一つデザインするのは大変だから継続してやっていこうとは思わないですけど、すごく面白かったです。

ーーメンバーは観に来てくれたんですか?

将:いや。PROTOTYPE+でベースを弾いてるKくんは来てくれましたけど。

ヒロト:俺、通販でクリアファイルセット買いましたよ。

将:おぉっ!! いい感じだな。

ーーでは最後に、これから始まる本作を掲げてのツアー<LAST DANCE ACT.2「Graced The Beautiful Story」>、どんなものになりそうか、言える範囲でヒントをお願いします。

沙我:アルバムのツアーでACT.2とあるってことは、さすがに2だけでは終わらないだろうということは分かると思います。このアルバムの見せ方は、少なくとも2バージョンぐらいはあるんだろうな、というのを想像していただきつつ、今日のインタビューで三部作というワードがあったと思うんですけど、そういう感じを伝えに行こうかなと思ってますね。だから、『VANDALIZE』と『GEMINI』の色も出てくるかなと思います。あともう一つテーマがあって。『GRACE』というアルバムは徹底してラウドな感じを排除してるんで、そこを意識した曲選びも面白いかなと思ってます。

Interview & Text:東條祥恵

Photo:宮脇進 (progress-m)

Photo (LIVE): Lestat C & M Project

Editor:木村秀之 (DE COLUM / 交文エージェンシー)

 

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▼RELEASE情報

アリス九號. 11th ALBUM「GRACE」

2022.11.02 RELEASE

【FC限定豪華盤(完全受注生産)】

[CD+Blu-ray+32P豪華ブックレット&デジパック仕様]

¥11,800(tax in) NINE-0047

▼アリス九號.オフィシャル通販サイト「MAD」

http://www.m-a-d.shop/

 

▼アリス九號.オフィシャルFC「NUMBER SIX.」新規ご入会はこちら

http://a9-numbersix.com/

 

【通常盤】

¥3,300(tax in) NINE-0046

<CD 収録内容> ※【FC限定豪華盤】【通常盤】共通

  1. Living Dead
  2. Funeral
  3. Moondance
  4. Exodus:
  5. Envy
  6. Answer
  7. Roar
  8. Farewell Flowers
  9. Grace

 

<Blu-ray収録内容>

・「Funeral」Music Video

・「Grace」Music Video

 

  1. 9th Revolver
  2. IDEA
  3. MEMENTO
  4. Adam
  5. UNDEAD PARTY
  6. 閃光
  7. BABYLON
  8. Exodus:
  9. 罪人
  10. ASYLUM
  11. 革命開花 -Revolutionary Blooming-
  12. MANDALA (मण्डल)
  13. Q.
  14. 虚空
  15. TESTAMENT
  16. RAINBOWS
  17. カルマ
  18. 開戦前夜

from 2022.03.19 Spotify O-EAST

ONEMAN TOUR「Brutal Revelation」

 

▼LIVE情報

<LAST DANCE ACT.2「Graced The Beautiful Story」>

■11/11(金) 福岡DRUM Be-1

■11/13(日) 岡山IMAGE

■11/19(土) 新潟NEXS

■11/20(日) 郡山HIPSHOT JAPAN

■11/25(金) 名古屋ReNY limited

■11/26(土) 大阪STUDIO PARTITA

□チケット:【全自由】¥8,000(税込/ドリンク代別途必要)

☆チケット発売中

 

<LAST DANCE ACT.2「Graced The Beautiful Story」TOUR FINAL>

■12/24(土) EX THEATER ROPPONGI

□チケット:【指定席】¥8,000 (税込/ドリンク代別途必要)

□一般発売日:12月3日(土)AM10:00

 

▼アリス九號. オフィシャルサイト

http://alicenine.jp

▼アリス九號. オフィシャルTwitter

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https://www.youtube.com/user/A9CH

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https://line.me/R/ti/p/%40a9_line

▼アリス九號. オフィシャルnote

https://note.com/alicenine