一夜二公演という形式で展開され てきたこのシリーズ・ギグのトータル公演数は、実に66本。最終 公演にあたる同夜第二部のステージが“涙が溢れる”の絶唱をもっ て着地点に至る頃、すでに時計の針は午前零時を回り、日付は12 月22日に変わっていた。
入場時のシステム上の問題から開演が遅れ、第一部がスタートした のは午後7時を過ぎてからのこと。
“空”で幕を開けたステージの なかば、清春はこのシリーズ全体を通じてリハーサルの遅れなどか ら開演時刻の遅延が少なくなかったことを認めながら「 今日だけは、僕は悪くない」とやや自嘲気味に笑う。が、そうした トラブルによりこのシリーズ独特の妖艶で濃密な空気が損なわれる ことは一切なく、彼は第一部、第二部とも2時間超のステージを披 露してみせた。
絶唱、妖艶、濃密。 すでに本稿のなかではこのような言葉を用いてきたが、そうした言 葉をどれほど重ねても、このプラグレス公演での清春の魅力につい て言い表すことは難しい。本当に一語で形容すべきなのであれば、 ボキャブラリーの欠如を自ら明かすようで恥ずかしいのだが「すご い」としか言いようがない。
“空”で幕を開けたステージの
絶唱、妖艶、濃密。
まず改めて説明しておくと、これはいわゆるアコースティック・ラ イヴではない。
中村佳嗣が弾くのは、エレクトリック・ギターだ。 が、きわめて音量を抑えたそのギターの音色と、大橋英之の奏でる アコースティック・ギター(大橋は三代堅に替わり、 8月よりこの公演に参加)以外、清春の歌声とその場に共存するも のは何もない。もちろん音楽である以上、 そこにリズムは存在するが、打楽器が刻む定速のビートに彼の歌は 支配されていないのだ。それは、 たとえば通常のアコースティック・ライヴと、演奏付きのポエトリ ー・リーディングの中間のようなものとも解釈可能だろう。
中村佳嗣が弾くのは、エレクトリック・ギターだ。
とにかく際立っているのは、リズムや各曲のオリジナル・ヴァージ ョンのイメージにすら縛られることのない、清春の歌唱表現の豊か さと奥行きの深さだ。
エモーショナルという言葉ではまるで足りな い感情過多なその歌声には、ある種の“念” のようなものを感じさせられる。そしてそれが、“歌詞” ではなくまさしく“詩”と呼びたくなる言葉の連なりを伴いながら 、ステージと対峙する者たちの心を揺さぶり、 時には涙腺を刺激し、最後には心からの自然な笑みをもたらすこと になる。
エモーショナルという言葉ではまるで足りな
この夜の二度にわたるステージでも、それは同じことだった。
第二 部は午後9時50分に幕を開け、冒頭の3曲を歌い終えた清春は、 両ギタリストを紹介したのち「いよいよ最後になりました」 と客席に告げた。そして、さまざまな哀歌を披露しながら色とりど りのダークネスをその場に描きあげ、最後の最後、“涙が溢れる” を締め括る「これを奪うなんて、出来ないよね?」という一節を無 伴奏状態で歌い終えると、一瞬の静寂を挟み、割れんばかりの拍手 がその場を包んだ。
第二
全66公演というロングランを走り終えた清春は、ステージから去 るのを名残惜しそうにしながら幾度も感謝の言葉を投げ掛け、「 また会いましょう、愛してます」「忘れないでいてください。 大事な、想いです」という言葉を残してその場を去っていった。
この大胆かつ繊細なシリーズ公演の産物というべきアルバム『エレ ジー』も去る12月13日にリリースを迎え、好評を博しているが 、彼は現在この作品に続く純然たるオリジナル・ニュー・アルバム を制作中でもある。すでに『夜、カルメンの詩集』というタイトル が明かされているこの作品は、2018年2月に発売を迎え、 それに合わせ、同2月23日には大阪BIGCATでの公演を皮切 りに「TOUR 天使の詩2018『LYRIC IN SCARLET』」もスタートすることになっている。
そして実は、まだ清春にとっての2017年は終わっていない。
1 2月24日の深夜には、東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて、『MIDNIGHT BIRD』と銘打たれたクリスマス公演(開場26時/開演26時 30分)が開催され、さらに大晦日には名古屋ダイアモンドホール での年越し公演、『’17 FINAL』も控えている。ひとつの大きな時間の流れに区切りを つけ、2018年に向かおうとしている清春が、この局面でどのよ うなステージを披露することになるのかにも注目したいところだ。
そして、渋谷で重ねられてきた夜の余韻は、まさしく『エレジー』 というアルバムで、時間と場所を問わずに堪能することができる。 それを味わいながら、次なる作品を待つとしよう。
1
増田勇一
Photo by 柏田芳敬
■リリース情報
Album「エレジー」
2017年12月13日発売予定
2CD+DVD/COZP-1402-1404/\5000+tax(完全初回生産限定)
Album「夜、カルメンの詩集」
2018年2月発売予定
【初回盤】2CD+DVD/COZP-1411-1413/\5000+tax(完全初回生産限定)
【通常盤】CDのみ/COCP-40251/\3000+tax
■「エレジー」収録内容
【DISC1”elegy”】
1. LAW’S / 2.ゲルニカ/ 3.アロン /4.rally/ 5. GENTLE DARKNESS /6.夢 /7.カーネーション /8. この孤独な景色を与えたまえ/9.輪廻/10.空白ノ世界
【DISC2”elegy”poetry reading】
1. LAW’S / 2.ゲルニカ/ 3.アロン /4.rally/ 5. GENTLE DARKNESS /6.夢 /7.カーネーション /8. この孤独な景色を与えたまえ/9.輪廻/10.空白ノ世界/11.YOU
【DISC3”elegy”performance(DVD)】・
<LIVE AT Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE>
サロメ/陽炎/瑠璃色/lyrical/rally/alice/シャレード
<MUSIC VIDEO>
「LAW’S」
■ライブ・ツアー情報
KIYOHARU 25 TIMES DEBUT DAY
2018年
2/9(金) 岐阜club-G
KIYOHARU TOUR 天使の詩2018『LYRIC IN SCARLET』
2018年
2/23(金) 大阪BIGCAT
2/24(土) 金沢EIGHT HALL
3/02(金) 仙台Rensa
3/16(金) KYOTO MUSE
3/17(土) KYOTO MUSE
3/21(水祝) 柏PALOOZA
3/24(土) 長野CLUB JUNK BOX
3/31(土) 札幌PENNY LANE24
4/07(土) 青森Quarter
4/08(日) 盛岡Club Change Wave
4/13(金) 名古屋 BOTTOM LINE
4/14(土) Live House 浜松窓枠
4/28(土) 鹿児島CAPARVO HALL
4/29(日) 長崎DRUM Be-7
5/03(木祝) EX THEATER ROPPONGI
【TOTAL INFORMATION】
オフィシャルサイト
https://www.kiyoharu.tokyo/pre
オウンドメディア
https://kiyoharu-ownd.themedia
レーベルアーティストサイト
http://columbia.jp/artist-info