【LIVE REPORT】 A9、全国ツアー「STAIRWAY TO MOON」 DAY12。”想い出の地” 新横浜NEW SIDE BEACH!! レポート


ニューアルバム『PLANET NINE』を引っ提げ、全26都市を巡るツアー真っ只中のA9(エーナイン)。その12公演目となる6/16(土)「新横浜NEW SIDE BEACH!!」のライブ
をレポートする。
当レポートは、いわゆる「ネタバレ」を一部含むため、「ツアーの初観戦日まで、内容は知らず楽しみに待っていたい」方は、これ以下の閲覧・閲読をどうか回避いただきたい。

「DE COLUM」(デコラム)が、このタイミングにA9のライブ取材を急きょ敢行するに至る背景をざっくり記したい。
まずは5/4 EX THEATER ROPPONGIでのライブを某サイト・タイムシフトで拝見し、
予想を超える楽しさと完成度に、取材に入らなかったことを大いに後悔したことに端を発する。その日バースデーを迎えたヒロト(Gt)、そして将(Vo)が語った言葉を読者に伝えたかった。次に、5/4はじつに「神掛かった」ライブであったが、その後のライブハウスツアーでは物理的制約もあり「表現が難しいのでは?」と疑ったことを、その後の高松・広島公演を密かに観戦し再び後悔した(取材体制でなかった)ことにある。

バンドの極めて良いコンディションを表しているのか、ツアー初日からの完成度、精錬度はとても高かった。また、「ファンを笑顔に、幸せに出来るなら、エンターテインする手法・手段は問わない」(将)
と、各種クリエイションと表現幅を、結成14周年を控えるここにきて、さらに拡げているのだ。
ただ、「何でもアリ、何でもやる」とは似て異なる。「バンドとしての軸足にまず、絶対的な自信が持てた」がゆえに、「表現の振り幅を自らで縛らず、“自分達らしさ”を考えて攻めることに躊躇はない」、ということらしい。

2006年以降、定期的に彼らを観てきたが、こと”LIVE”に於いては、「いま最も脂がのっている」、「終演後の多幸感が大きい」と率直に感じている。極めてシンプルに、ライブが「楽しい」のだ。 これを読んでくれている方にその一点は、まず先に伝えておく。

6/16横浜でのレポ実施を決めた理由は、この会場(旧称・横浜アリーナサウンドホール)が、虎(Gt)がその昔アルバイトをしていたらしく、ここで沙我(Ba)やNao(Dr)との出会いも果たしたらしい、との情報を得たからだ。
メンバー各々、若かりし日の想い出多き会場で、しかもチケットが完全に「ソールドアウト」と聞いて、取材しないわけにはいかない。

一瞬だけ楽屋を覗くと、「やっぱ似てるよね?俺たちの色」。点灯式リストバンドの色をめぐり、リズム隊の二人が話している。リハもメイクも終え、二人はもう準備万端のようだ。フロア最後方に行き、待機。
どんなライブになるのかわくわくしつつ、開演を待った。

17時30分、開演予定時刻ほぼオンタイム。
「PLANET NINE-INVITATION-」をSEに、メンバーが1人づつステージに現れると、その都度フロアから大きな歓声があがった。メンバー5人が定位置に収まると、アルバム・リード曲の『UNREAL』でライブは幕を開けた。


冒頭からフロア全体が激しい縦ノリだ。
続く『華』は2009年に発表されたナンバー。そして『道化師』、『開戦前夜』が立て続けに披露されると、満員のフロアは上下に前後に揺れに揺れて、まさに「開戦」といった様相だ。


「たどり着いたぜ、ヨコハマ!」
将がMC第一声をとる。「ここが、こんなに後ろまで埋まってるの見たことないよ。こんないい景色は」と挨拶。そして「知ってる人いる?ここが虎の元バイト先だって」
虎が応える。「はいっバイトしてましたー!あれからもう18年?経っちゃいました!しかも俺が働いてた時より、時給が200円アップしてやがるっ!(笑)」

学生当時、ここから原付(バイク)で15分の所から、制服(ブレザー)姿でアルバイトに通っていたという虎。
まだ序盤なので、虎の積もる想い出話はいったん止めて、マイクはヒロトに。

ヒロト「みなさん、開戦してますか!! 後ろの方はちょっと見えづらいかもしれませんが。。。ライブは目で見るんじゃない!心で通じ合って感じ合って、かかってきてください!!」
将が応える。「目で耳で、心で感じて、俺たちを味わい尽くして帰って下さい!準備はいいか!」
大歓声で応えるフロア。

将が真っ赤な旗を掲げて最新アルバムから『GIGA』を披露すると、
続く『造花の代償』では将から虎へ、虎からフロアのファンへ赤い薔薇の花が手渡される。

再びMC。
沙我がマイクをとる。「前のバンドでココでやってた時は、最前(列)が埋まってなかったですからね。最初はお客さんが5人位だった気がする」
虎 「沙我さんはねぇ、当時サングラスかけて僕にベースアンプを運ばせてました、しかも無駄に大きい(笑)。 当時から、堂々たる大物感ありましたよ」
沙我 「いやまさかこの方(虎)とバンドやるとは、当時、思ってなかったですよ」

MCパートは、いつもながら終始笑いに包まれる。

虎 「じつはNaoさんとも、ココで出会いましたね。」
Nao 「え?ほんとに!? 憶えてないんですけど!」
虎 「あの頃のNaoさんは、ジーパン、Tシャツ(をパンツに)イン、にメガネっていうね」
将 「あぁ、あの頃のNaoさんね…(苦笑)」

その格好でキックボードに乗って、この会場まで来ていた想い出を嬉しそうに語るNao。

沙我 「でも実際、今ではこんな素晴らしい景色が見れるなんてね。当時の僕に教えてあげたいですね」
その言葉を聞き、嬉しそうなメンバー達と、フロアを埋め尽くすファン。
永遠に続きそうな5人の想い出話を聞いていて、まだごく普通の音楽好きな少年達だった5人の面影が、少しだけ垣間見えた気がした。

そしてライブ本編に戻る。

『FIVE JOKER』では、ヒロトと虎がギターソロ・バトルで互いに見せ場を作り、大いに盛り上げる。


続く『CROSS GAME』はちょうど10年前に発表された海外ファンにも高い人気の曲だ。

幻想的なバックライトを浴びて、『Scarlet』そして『ソナタ』へ。そして、将と沙我の掛け合いに耳と目をLOCKされる『ASYLUM』が披露された。

ニューアルバム収録順と同じ流れで続く『Re:Born』で一転、「未来掴み取る意志、君の手掴み走り出す覚悟」と、今のA9を写すかような眩く力強い、ポジティブなメッセージが会場中に響き渡った。

将が、静かに、しかし力強く語りかける。
「日常を生きてるなかで、『これがホントに自分なの?』って思ったりすることって誰しもあると思う。俺たちも『俺たちってどんなバンドなのか』、『どうあるべきか』ってよく話してたんだけど。でも結局、いつも、これは綺麗ごとに聞こえるかもしれないけど、『みんなの力になりたい』って、ホントにそう思ってて。で、僕らの出来ることって、こういうある意味、非現実な時間や空間を作り、それを守っていくことだと思ってて。これを守っていく為に、ときに何かと戦ったり、変えていかなくちゃいけないこともあって。大事なものの為に、まず自分達が率先してルールを壊してかなきゃならない時もあるんだなって思ってます。これが俺たちなりの戦い方だから。皆それぞれが、自分なりに、自分らしく生きる、その戦い方を見つけて欲しい。その僅かな後押しに、ヒントになってくれたらいいなと思って、作った曲です」
そう紹介され始まった『F+IX=YOU』。

未来図(人生)は、自分の意志でどのようにも変えられる。
背中を少し押すけれど、いつでもそばにいる。そんな想いを込めた曲だと制作中に聞いたことを思い出す。

そして、『CASTLE OF THE NINE』からの『UNDEAD PARTY』という、異色のカオス・パートへ。

これはもう、観て頂くしかない。感じ方は、人それぞれのはずだ。ワンマンライブに限らず、ニューアルバム『PLANET NINE』を聴いた人、イベント等でこれら曲のステージングを観た人は少なからずザワついている。
そのザワつきに気づいた某ロック誌の雄の取材に、沙我は「この曲(CASTLE~)を克服する為のツアーだと思ってます」と真顔で答えていたが、真意は分からない。
ただ沙我の言葉が暗示するのは、確実に、『CASTLE OF THE NINE』のステージングが見られるのは、同曲を収めたアルバム・ツアーまでの可能性があるということ。
すなわち、ラスト2本を残すのみとなった当「STAIRWAY TO MOON」ツアー、来月に控える「STAIRWAY TO MARS」ツアー、そしてツアーファイナルとなる8/25(土)新木場STUDIO COASTでの結成14周年記念ライブ「ALICE IN CASTLE」までかも、ということ。

『UNDEAD PARTY』のパフォーマンス途中、フロア後方のステージが殆ど見えないであろうことを気にかけていた地帯めがけてヒロトがステージを降り、果敢に乱入。
当然ギターも衣装も揉みくちゃになりながらもフロア最後列にまで達し、彼らしいアグレッシブさと優しさで、上手の最後方のファンをもしっかり楽しませていた。

本編ラストは『MEMENTO』。会場のボルテージがMAXに近づくにつれ、酸素は薄まり、カメラのレンズが会場の熱気と蒸気で何度も曇ってしまうほどだった。


アンコールの声が響きわたる中、会場スタッフの方々が後方扉から会場の入場口までのあらゆる扉を全開にして空気(酸素)を会場内に入れている。

やがて、ヒロトとNaoが登場して、まずはグッズの紹介。
その後、ツアーグッズのTシャツに着替えたメンバーが全員揃ったところでMCに。

ヒロト 「僕もいわゆるヴィジュアル系と呼ばれるバンドで、2回目にやったライブがココでした。その時の動員はたしか7人でしたね。フロアの後ろに物販エリアがあって、そこの売り子さんの方が多いっていう(笑)。なんか鯖(サバ)を客席に投げてるバンドもいたりして。その後、出禁になってましたけど」
沙我 「あっ、ヒロトさんレベルでもそれくらいだった?」
ヒロト 「えっ!?、どういう意味ですか(笑)」
沙我 「横浜で活動してたバンドってなんか皆独特で。どんどんドラムが前に出てきて煽る、みたいな。それに衝撃受けて。でも考えてみると、ウチ(A9)、立派に血を継いでたね」
虎 「俺が知ってるどのバンドよりも、(Naoを指さし)前に出てますね(笑)」
将 「DNAだね」
沙我 「DNA…(微笑)」

フロアから笑いがこぼれるなか、ここでサプライズなお知らせがあった。

9/17(月・祝)「虎バースデー・ライブ」開催。会場は同じく、新横浜NEW SIDE BEACH!!。全曲、虎原曲の楽曲で構成される。すなわち「激しめの曲中心」になるという。

嬉しいお知らせを終えると、アンコールに突入。
当ツアーでは毎ライブ、過去のいずれかのアルバムにフォーカスしてアンコール曲を
構成している。この日は1stFULLアルバム『絶景色』から、『光環』、『ヴェルベット』、『DEAD SCHOOL SCREAMING』が選ばれた。

12年前にリリースされたアルバムの楽曲たちだが、未だ全く色褪せず。メンバー個々がスキルアップしたこともあってか、当時よりも楽曲たちが輝いて聴こえる。


『光環』で歌っていることは、12年が経った今でもこのバンドが一貫してブレずに語り、歌い続けていることで、このバンドの「コア」はホントにいま「此処」にあるんだな、と改めて思いながら聴いていた。

将の「飛ばしていくぞ!」の煽りで始まった、『ヴェルベット』~『DEAD SCHOOL SCREAMING』の2曲はもう、ステージもフロアも狂乱の宴といった感じで、完全に一体化したかのようだった。ステージから将の姿が「消えた?」と思ったら、客席フロア最後方の扉から現れ、悲鳴のような大歓声が後列フロアに沸き起こる。これまた激しい、
もみくちゃの嵐の中、先ほどのヒロトのフロア上手エリア突入に対し、将は最も前後・左右から「圧」の激しそうな、フロアの「どセンター」を、ステージ目指し、歌いながら進む。道どころか歩みを進める隙間すら無い分、いわゆるプロレス入場より数倍カオスな状態になっている。
だがフロアのセンター後方付近にいたファンは、目の前を真横を悪戦苦闘しながら前進する将の姿を見て本当に嬉しそうだ。どうにかして早くステージに戻そうと、誰もが僅かな足場もないなか協力し合っている。

ステージ上では、いつの間にか沙我が立ち位置をセンターに移し、将の帰還をステージから、熱く鋭い眼差しで見守っている。

『DEAD~』の中盤あたり、将もヒロトに同じくボタンやら何やらが取れた状態ながらステージに無事帰還。
すると今度は沙我がステージからふっと姿を消す。数十秒後、案の定、フロア最後列の扉からベースを弾いたまま姿を現すと、最後の仕上げと言わんばかりに、フロア下手側の最後方列から、進む足の置き場すらない道なき道を、ベースをゴリゴリ弾きながら一歩一歩、ステージを目指し歩みを進める。下手前方のファンも、後ろから徐々に前進してくる沙我を笑顔で待ち構えている。

沙我も、ステージ横スピーカー前に戻り着いた時には、衣装も楽器も大変な状態に見えたが、
それでも全く「悔いなし」といった様子で、チューニングがぐちゃぐちゃになったベースを、スタンバイ済みの新しいベースに持ち替え、飄々とステージ定位置に帰還した。

5/4のホールライブでは、将は2階席の最後列まで行って歌い、その間、ヒロトは1F客席全体を、まるでステージ上のごとく軽快に動き回っているライブ映像を観た。

以前、会場の構造やサイズ、演出などの面で、A9のライブの魅力を十分に伝えきれないようなシチュエーションではどうするのか、将とヒロトに聞いたことがあった。 ヒロトは即答、「マンパワーでカバーします。体と手足があるんで」と言い、キランと目を輝かせた。 隣に座る将もそれを聞き、涼しく微笑みながら頷いていた。
彼らは有言実行のバンド―。

怒涛のような2曲を終え、アンコールのラスト曲を前に、将がこの日最後のMCをとる。
「思い出の場所って、本当にいろんなことを思い出します。俺と虎がココで練習したり、ライブしたりしてた頃って、まだ俺たち何者でもない、バンドをやってるただの男の子でした。でもそこからいろんなことや出会いがあって、人生が前に進みだして、みんなにも出会えて、ここまで来れました。いろんな選択肢のなかでA9というバンドを選んで、一緒にここまで歩いてきてくれたこと、こうして此処に足を運んでくれたこと。その全てに俺たちホントに救われてるよ。どうもありがとう。」

あたたかな拍手で応えるファン。

将は続ける。「自分で何かを決めるのは大変なことだし、勇気もいるけれど、いろんな選択をして、何か一つ、選んだからこそ、人生が前に進んでいくんだと思ってます。なかなか決められなかったり、ときに立ち止まってしまうことだって、全然わるいことじゃない。
俺たちも14年め、ただ何となく流れていくんじゃなくて、皆と一緒に、同じ未来を描いていけるように、もっとでっかくなって、また帰ってきます」

「次の曲は、このツアーで初めて(の披露)じゃないかな? 今の僕たちの、正直な
気持ちです。 届けさせて下さい。『the beautiful name』」―。

こうして、この日集まった全ての人が万感の想いを抱くなか、A9想い出の地でのライブは幕を下ろした。

Photo: Shinji Tanaka (Luz-p.o.)
Text: Hideyuki Kimura (DE COLUM)

<SET LIST> 6/16 新横浜NEW SIDE BEACH!!

(OP/SE) PLANET NINE-INVITATION-
1.UNREAL
2.華
3.道化師
4.開戦前夜
5.GIGA
6.造花の代償
7.FIVE JOKER
8.CROSS GAME
9.Scarlet
10.ソナタ
11.ASYLUM
12.Re:Born
13.F+IX=YOU
14.CASTLE OF THE NINE
15.UNDEAD PARTY
16.MEMENTO
EN
17.光環
18.ヴェルベット
19.DEAD SCHOOL SCREAMING
20.the beautiful name

▽LIVE情報
「STAIRWAY TO MOON」-月への招待-
5/4(金祝)EX THEATER ROPPONGI
5/19(土)水戸LIGHT HOUSE
5/20(日)宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2
5/25(金)仙台darwin
5/26(土)盛岡CLUBCHANGE WAVE
6/2(土)岐阜ROOTS
6/3(日)京都FAN J
6/5(火)高松DIME
6/7(木)広島SECOND CRUTCH
6/9(土)熊本B.9 V1
6/10(日)鹿児島SR HALL
6/16(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!
6/23(土)新潟NEXS
6/24(日)郡山CLUB#9
「STAIRWAY TO MARS」-火星への招待-
7/5(木)福岡DRUM Be-1
7/7(土)大分DRUM Be-0
7/8(日)愛媛サロンキティ
710(火)松江AZTiC canova
7/11(水)岡山IMAGE
7/13(金)大阪BananaHall
7/14(土)浜松窓枠
7/16(月祝)名古屋E.L.L.
7/21(土)金沢AZ
7/22(日)長野LIVE HOUSE J
7/28(土)函館CLUB Cocoa
7/29(日)札幌PENNY LANE24

【TOUR FINAL 14th ANNIVERSARY LIVE】
「ALICE IN CASTLE」-星の王子と月の城-
8/25(土)新木場STUDIO COAST

▽リリース情報
8th ALBUM 『PLANET NINE』
NOW ON SALE.

A9 オフィシャルサイト
http://a9-project.com