[ALEXANDROS]の航海はファンと共に。熱狂の宴“VIP PARTY 2018″ライブレポート

 [ALEXANDROS]が8月16日千葉・ZOZOマリンスタジアムで自身初となるスタジアム・ワンマン・ライヴ”VIP PARTY 2018″を開催した。

Photo:山川哲矢

 今年のVIP PARTYは、[ALEXANDROS]の航海の歴史を振り返りながら、これからの軌跡に思いを馳せる熱狂の宴となった。

 村田泰子率いるストリングスチーム“村田一族”が流麗な旋律を奏で、庄村聡泰がドラムを叩くと、ベース&コーラスの磯部寛之、ギターの白井眞輝と、ひとりずつステージに登場。最後にボーカル&ギター・川上洋平が花道に登場すると、ライブはいきなり代表曲「ワタリドリ」から始まった。

 [ALEXANDROS]が大衆に広まるきっかけとなった楽曲を初っ端で演奏し、会場のテンションはフルスロットルだ。アリーナはもとより、スタンド席をも埋め尽くした35,000人もの観客が、空に向かって伸ばした腕を振る。アリーナで揺れる手のひらたちは、まるで浜辺に打ち寄せるさざなみのようにうごめき、この日のVIP PARTYを一気に波に乗せた。

 ワタリドリが羽ばたくと、ステージ中央のスクリーンに、過去の(Premium)VIP PARTYを振り返る映像が流れる。

・2012年4月04日 渋谷 CLUB QUATTRO、4月06日 心斎橋 Music Club JANUS
・2013年7月15日 Zepp DiverCity
・2014年3月25日 EX THEATER ROPPONGI
・2015年7月17日 日本武道館
・2016年6月26日 大阪城ホール
・2017年7月02日 日本ガイシホール

 以上はこれまでVIP PARTYが催された会場のリスト。[CHAMPAGNE]時代から催されてきたイベントが、着実にそのステージを大きくしてきた歴史が伺える。映像を見ていると、[ALEXANDROS]の4人の面構えもだんだんと頼もしくなっていることがわかって微笑ましい。

 長年のファンにとっては感慨深い映像に、新規のファンにとっては驚きの記録になっただろう。

 映像のラストでは「R U READY?」の文字が浮かび上がった。この日のライブも[ALEXANDROS]の偉大な歴史の1ページになることを観客の誰もが知っていた。このバンドの歴史は、彼らと、ここに集まったファンによって新たな1ページを刻むことになる。

Photo:AZUSA TAKADA

 ここから11曲が1時間以上に渡って連続で演奏される。「For Freedom」は1stアルバム『Where’s My Potato?』から、「city」「Cat 2」は2ndアルバム『I Wanna Go To Hawaii.』の収録曲、そして「Waitress, Waitress!」「spy」は3rdアルバム『Schwarzenegger』という具合に、リリース順にアルバムから選曲されている。

 この流れからわかるのは、[ALEXANDROS]のヒストリーを丁寧に紡ごうという彼らの意志だ。どれほど大きなステージに立っても、[ALEXANDROS]は過去を忘れない。ひとつひとつの曲があり、一歩ずつ階段を上がってきた。その歴史こそが[ALEXANDROS]だと高らかに誇っていた。

 VIP PARTYで息を飲んだ演出はいくつもあったが、まず特筆すべきは「Droshky!」(5thアルバム『ALXD』収録)だろう。

 同曲は改名後、はじめてのライブでパフォーマンスされた当時の新曲。そのときのライブ映像が流れるあいまに、アレキサンダー大王に扮したであろう男が、シャンパンの注がれたグラスを落として割る映像がインサートされる。「はじめまして、[ALEXANDROS]です!」という川上の叫びが、4年の時を経てふたたびマリンスタジアムにこだました時、盆の終わりの夜空に[CHAMPAGNE]が鎮魂され、歴史のすべてを[ALEXANDROS]が引き受けた。そんなドラマを見てしまった。

「ムーンソング」はストリングスの力も借りて荘厳なミディアムナンバーとなり、スタジアムバンドとしてのスケールの大きさをアピールする一曲となっていた。川上の「歌えるか!」の問いかけに会場が一体となってシンガロングしたが、これは今日何度目のできごとだったろうか。[ALEXANDROS]の楽曲を血肉化したファンたちは、どの曲でも共に口ずさみ、腕を上げ、体を揺らす。小雨の降りはじめた、暗雲垂れこめる上空、ふと雲間から覗いた三日月の光が、マリンスタジアムに集ったすべての人びとへの祝福のように降り注いでいた。

Photo:山川哲矢

 この後センターステージに移動したメンバー。ここでようやく初MCだ。会場のいたるところからメンバーを呼ぶ声が響きわたり、磯部は「ただ景色見てるだけで楽しい」と話した。

 川上は「ずっと雨の予報だったのに、昨日晴れの予報に変わったんですよ。だからこのサブステージに立って『みんなのおかげで晴れました!』って言おうと思ってたんだけど雨降ってきました」と笑いつつ「まあこれも、ウチららしいかなと思います」と語る。

 雨が降りつづけていたらこのサブステージでの演奏は取りやめになっていたという。[ALEXANDROS]が《持ってる》バンドだという証明するようなタイミングの良さだ。

 このサブステージでは、事前にファンから募ったリクエストソングをダイジェストでパフォーマンス。アルバム収録曲はもちろん、シングルカップリング曲まで網羅したラインナップに、[ALEXANDROS]の楽曲のふところの深さを感じる。

Photo:山川哲矢

 サポートメンバーでキーボードを担当するROSEの奏でる流麗な旋律が美しい「Oblivion」や「Wanna Get Out」「Travel」といったレア曲も演奏されつつ、“Rain fall down onto the ground”と歌う「Raindrop」や“雨が降って飛び込んでいったあの世界に“の歌詞がある「Thunder」の並びが、シチュエーションを味方にしてドラマティックに聴こえる。

 3位にランクインしたが、すでに演奏したためダイジェストに入れなかったという「Starrrrrrr」を川上が「やってほしいですか?」と問うと、会場は大歓声で応えた。ファンの期待に押されるように、「Starrrrrrr」をサビから歌い出すが、メンバーは早々に演奏を止める。しかし、その後も会場中は35,000人の歌声が満たされていた。

 磯部は「白状していいですか。演奏止めたらみんなが『えーっ!もう終わり?』って空気になって笑って終わる流れを想像してたんですが、(みんなが歌ってくれて)感動しました。素晴らしい」と感極まっている様子だったのが印象深い。

 リクエスト1位の「Leaving Grapefruits」をフル尺でパフォーマンスすると、メインステージへと帰り、ここから怒涛のエンディングへと向かって再び加速していく。

 秋に発売されるアルバム収録の「LAST MINUTE」をはじめとして、ここからパフォーマンスされるのは《これからの》[ALEXANDROS]だ。

「明日、また」の”愛したいなら 思う存分愛せばいい”の言葉は、[ALEXANDROS]がファンのありったけの熱情を受け止めることを宣言しているように聴こえる。

「I Don’t Believe In You」では磯部がボンゴを叩きグルーブを生み出し、骨太なロックナンバーがスタート。白井のギターが叫びをあげ、庄村のドラミングが大地を震わす。川上のハイトーンボイスは終盤にきても衰えることがない。

 そして本編ラストはまるで[ALEXANDROS]による”ストーナーロック再解釈”ともいえる新たな代表曲「Mosquito Bite」で締めくくられた。重量級のギターリフと、地底を這うベースサウンド、絨毯爆撃のようなドラミング、そして川上のパワフルかつ色気ある歌声、そしてスタジアムを満たしたシンガロングが、フィナーレを飾った。

Photo:河本悠貴
Photo:AZUSA TAKADA
Photo:AZUSA TAKADA

 メンバーがステージを去ると、アンコールを求める声や手拍子が起こると同時に、スタンド席でちらほらとスマートフォンのライトが光り出した。光は伝染していき、やがてスタジアム中を埋め尽くす。

 再びステージに出てきた[ALEXANDROS]のメンバーはその光に驚き、アンコール1曲目「ハナウタ」は観客に照らされるなかでパフォーマンスされた。その幻想的な空間で、川上は”ひかりの中に恋をしてる 孤独はきっと、そういうもの”と優しく歌う。35,000人のひとつひとつの孤独を癒やすようだった。

Photo:河本悠貴

「Adventure」では“大胆な作戦で 言葉にならないマスタープランで いつだって僕たちは君を連れていくんだ“と、そしてラストソング「Kick & Spin」では“悔しさ味わい 苦味も味わい 酸いも甘いも全部飲んで 生きていく”と歌い、VIP PARTYは終演を迎えた。

 [ALEXANDROS]はこれまで着実にステージを上ってきたが、それでもその航海が常に順風満帆だったとはいえないだろう。それでも全曲を終えた彼らが花道のうえでグラスに注がれたシャンパンを飲んでいる光景を見ると、彼らは酸いも甘いも全部飲みこんで生きていくだろうと、信じられる気がした。

 この日は風が強く、用意されていた花火が咲くのを見ることは叶わなかった。しかし、そのかわりにマリンスタジアムを満たした観客たちのビッグウェーブに乗って、[ALEXANDROS]の航海は、もっと遠くへとファンを連れていくことだろう。その手始めに彼らは、9月にマレーシアでライブを行い、10月にはアメリカツアーを敢行する。

Photo:AZUSA TAKADA

TEXT:安里和哲

 

[ALEXANDROS] VIP PARTY 2018 Set List
01.ワタリドリ
02.For Freedom
03.city
04.Cat 2
05.Waitress, Waitress!
06.spy
07.Forever Young
08.Starrrrrrr
09.Droshky!
10.Run Away
11.Girl A
12.ムーンソング

〜Requestダイジェスト〜
13.Oblivion
14.This Is Teenage
15.Wanna Get Out
16.Famous Day
17.Kill Me If You Can
18.Waterdrop
19.Thunder
20.Travel

21.Leaving Grapefruits
22.LAST MINUTE
23.明日、また
24.I Don’t Believe In You
25.Mosquito Bite

Encore
01.ハナウタ
02.Adventure
03.Kick & Spin

VIP PARTY 2018特設サイト
http://alexandros.vip/

 

ライブ情報

<[ALEXANDROS] Live in Kuala Lumpur 2018>
9/22  Kuala Lumpur @ KL LIVE

<[ALEXANDROS] USA TOUR 2018>
10/14  Dallas, TX @ Canton Hall
10/15  Houston, TX @ Scout Bar
10/17  Oklahoma City, OK @ Diamond Ballroom
10/22  Washington D.C. @ U Street Music Hall
10/23  New York, NY @ Gramercy Theatre

<[ALEXANDROS]オフィシャルHP>
https://alexandros.jp

<商品情報>
タイトル: Mosquito Bite
発売日:2018年7月18日(水)

【完全生産限定盤】(CD+Mosquito Aroma Band) UPCH-7438 \1,800(税抜)+税

【通常盤】(CDのみ) UPCH-5949  \1,200(税抜)+税

収録曲
M-1 Mosquito Bite  (映画『BLEACH』主題歌)
M-2 MILK (BLEACH version) (映画『BLEACH』挿入歌)

“Premium V.I.P. Party 2017” live at Nippon Gaishi Hall
M-3 Stimulator
M-4 Grand Daddy ~ Dance With the Alien ~ Onion Killing Party
M-5ムーンソング

<特設サイト>
[Alexandros] 「Mosquito Bite」特設サイト
https://sp.universal-music.co.jp/alexandros/

<第一弾ライブハウスツアースケジュール>
2018年
12/4 (火) Zepp Nagoya
12/5 (水) Zepp Nagoya

12/10 (月) Zepp Tokyo

12/11 (火) Zepp Tokyo

12/20 (木) Zepp Osaka Bayside
12/21 (金) Zepp Osaka Bayside

2019年
1/11 (金) 高松festhalle
1/12 (土) 高松festhalle
1/18 (金) Zepp Fukuoka
1/19 (土) Zepp Fukuoka
1/24 (木) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
1/25 (金) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
1/30 (水) 新潟 LOTS
1/31 (木) 新潟 LOTS
2/4 (月) 金沢 EIGHT HALL
2/5 (火) 金沢 EIGHT HALL
2/9 (土) 沖縄 ナムラホール
2/10 (日) 沖縄 ナムラホール

チケット:前売 ¥6,800(ドリンク代別)

<プロフィール>
[ALEXANDROS]は、2007年本格始動。2015年よりユニバーサルミュージックとグローバル契約を結び、3月に10th Single「ワタリドリ/Dracula La」をリリースし、オリコンウィークリーシングルランキング初登場5位を記録。
6月には約2年ぶりとなる5枚目のフルアルバム「ALXD」をリリース、オリコンウィークリーアルバムランキング初登場3位を獲得。12月に11th Single「Girl A」をリリース、オリコンウィークリーシングル初登場3位を獲得。
7月には2度目の日本武道館単独公演を成功させ、全国各地の音楽フェスに数多く出演しヘッドライナーも務める。
またMUSE・PRIMAL SCREAM・KASABIAN等の海外アーティスト来日公演のサポートアクトや、アメリカの“SXSW”、イギリスの“THE GREAT ESCAPE”への出演、台湾でのワンマンライブを行うなど海外を視野に入れた活動を続けている。
2016年3月30日LIVE DVD&Blu-ray「[Alexandros]live at Makuhari Messe “大変美味しゅうございました”」発売。4月には2016年第一弾となるDouble A Side Single「NEW WALL / I want u to love me」発売。8月に発売したシングル「Swan」はドラマ・映画・CMのトリプルタイアップが付いたシングルとなり、スマッシュヒットを飛ばした。11月には6枚目のフルアルバムとなる「EXIST!」をリリースし、オリコンウィークリーチャートで初登場1位を獲得。
2017年2月にはCMタイアップで話題となった14th Single「SNOW SOUND/今まで君が泣いた分取り戻そう」をリリースし話題となる。7月にはLive Blu-ray&DVD『We Come In Peace Tour & Documentary』を発売し、オリコン総合ミュージックDVD・BDランキングでアルバム「EXIST!」に続き1位を獲得。11月には、15thシングル「明日、また」を発売し、5月には16thシングル「KABUTO」をリリース。2018年は自身初となるスタジアムライブを控え、秋にはアルバムも発売予定と、今年の活動に目が離せない注目のロックバンドである。