sads、ラストライブで全歴史を網羅!最終夜を豪華に彩る

2018年11月30日、東京・品川ステラボール。本年をもって活動休止する sads がラストツアー〈The reproduction 7th anniversary 『FALLING』Chapter3 TOKYO 7DAYS〉の最終夜を豪華に彩った。全会場ソールドアウトの本ツアー最終章は、この日も当然、超満員。全国各地から集結したファンで溢れた場内は、ロックンロールの熱気が激しく渦巻く空間へと変貌した。

1999年に結成、2010年に新たなメンバーで再始動してから実に 7 年を経ての活動休止。本公演の 1 つ手前、11月27日の下北沢 GARDEN 公演で、清春(Vo)は観客に向けてこんなふうに語っていた。
〈品川は僕らの最初のライヴのつもりで来てくだ
さい。「こんな新しいバンドを組んだんだ!」って感じで。綺麗に、美しく、生きてることを実感しながら観てください〉
そん
な鮮烈な光景を 1 秒でも多く目に焼き付けようと、開演前からオーディエンスの気分は最高潮に高まっている。

SE が鳴り、sads のメンバーが現われると、フロアからは絶叫に近い歓声が放たれる。清春が 1 曲目の「freely」を歌い始めた瞬間に、観客の意識はひとつに束ねられた。今年リリースされた事実上のラスト・オリジナル・アルバム『FALLING』からのこの楽曲を皮切りに、sads が生み出してきた名曲の数々が息つく間もなく繰り出される。
緻密かつ情熱的に爆音を操る
K-A-Z(G)、激烈な連打で空間を揺らす GO(Dr)、華やかなグルーヴで魅了する YUTARO(B)。強力な個性の彼らを従えた清春の統率力に、観客は早くも陶酔している。「年季の入った悪い感じを楽しんで!」と清春が煽り、「See A Pink Thin Cellophane」と「FREEZE」で妖しくフロアを揺らせば、本編序盤にして「ID POP」「WHITE HELL」「AMARYLLIS」などの必殺のナンバーが畳み掛けられるゴージャスな展開。1 曲演奏されるごとに、フロアの熱気は上昇してゆく。

K-A-Z が巧みなテクニックで情緒たっぷりのギターソロを奏でると、本編は中盤へと突入。清春が妖しく淫らに観衆を扇動する「GOTHIC CIRCUS」の後、「HONEY」「Hate」といった甘く邪悪な轟音が続く流れなどは、聴覚的にも視覚的にもワクワクさせてくれる。

GO が渾身のドラムソロで観客を熱気まみれにすると、本編はいよいよ終盤へと向かう。「GIRL IN RED」「MAKING OTHER FUCKER」「NIGHTMARE」などの過激な楽曲が連発されると、オーディエンスは当然のごとく、揉みくちゃ状態に。ここから清春が天性のカリスマを発揮する「Because」へと到達すると、本編は狂乱のうちに幕を閉じた。

観客はまだまだド派手なロックンロールを求めている。再びステージ上に姿を現す sads の面々。清春が観衆に向けて語りだす。「K-A-Z くん、GO くん、YUTARO との関係は死ぬまで続きます。ファンのみんなにも会えたし、sads をやって良かった。僕はあんまりバンドというものが好きじゃない。でも、僕がやったバンドの中でも、これが一番強烈だったと思います」

アンコールに応えた彼らは、「LIAR」「Liberation」といった攻撃的なチューンを続けた後に、「Mr.「YA」」「TRIPPER」といった初期 sads のキャッチーな必殺曲を投下。極上の笑みが瞬く間にフロアじゅうに広がっていくのがわかる。

客席の狂熱は未だ収まりそうな気配がない。この夜、2 度目にして最後のアンコールが披露されようとしている。本ツアーが Chapter 3 に入ってからというもの、アンコールは 1 回限りだっただけに、こうしたラスト・サプライズが嬉しい。だが、ここで更に衝撃的だったのは、清春の口から告げられた“お知らせ”だ。〈12 月 21 日、追加公演、川崎クラブチッタ! そこで sads の最後のブザマな姿をさらします!〉この瞬間、場内にこの日最大級の歓喜の声が広がったのは言うまでもない。

こから sads のロックンロールの代名詞ともいえる「SANDY」でフロアを踊り狂わせると、ラストに鳴り響いた「CRACKER’S BABY」。凶悪で重厚なサウンドが炸裂し、ステラボールを塗りつぶしてゆく。〈突っ込め! 突っ込め!〉の清春の挑発を受けて、思い思いの生きざまを爆発させるオーディエンスの姿が印象深い。この痛快無比な爆裂チューンが着地点を迎えると、フロアからは惜しみない拍手と感謝の言葉がステージに向けて贈られていた。

終わってみれば、sads のヒストリーを網羅した究極のセットリスト。他の誰にも成し遂げようのない、圧倒的なラストダンスだった。もちろん、sads の過去の名シーンの数々を思い出して感傷的になってしまう瞬間もあった。だが、それ以上に心に残ったのは、アルバム『FALLING』という傑作を作り、ツアー〈FALLING〉を完遂した現在の輝かしさだ。華麗、強靭、妖艶……。最後の最後に絶頂期を迎えて活動を休止するというカッコ良さ。まさに sads が我々に与えてくれた、“最後の宝物”とでも呼ぶべきライヴだった。史上類を見ない活動休止ツアーの最終夜は、ファンにとって、生涯忘れることのできない美しい思い出となった。

しかしながら、この最終章には、想定外の“続き”が用意されている。本来開催されるはずのなかった、12 月 21 日川崎クラブチッタでの追加公演。正直なところ、現時点ではどんな内容のライヴになるのか、まったく推測できない。つくづく、sadsというバンドには、何をしでかすのかわからないスリルがある。その危険な魅力に、我々はこれからもずっと笑顔で踊らされ続けるのだろう。

[TEXT BY] 志村つくね
[PHOTO BY] 森 好弘(Yoshihiro Mori) 柏田 芳敬(Yoshitaka Kashiwada)

TOUR 『FALLING chapter3』 2018.11.30 @品川ステラボール セットリスト
SE evil テーマに戻し
1 freely
2 See a pink thin Cellophane
3 FREEZE
4 ID POP
5 WHITE HELL
6 AMARYLIS
K-A-Z Gt.solo
7 GOTHIC CIRCUS
8 HONEY
9 Hate
GO Dr.solo
10 GIRL IN RED
11 MAKING MOTHER FUCKER
12 NIGHTMARE
13 Because