MIYAVIが創りだす革命前夜。「壁なき」新時代の幕開けをみた ”Before Worlds Collide” ライブレポート


「どんな音楽が好き?」そう訊かれた時に、「邦ロック」などと答える人は少なくないだろう。「音楽が好き」と口癖のようにいう人でさえ、音楽をジャンルでとらえ線引きをしている。「音楽に壁はない」そう魔法のように唱えるにも関わらずだ。
その壁を壊すべく、ギターという刀を手に現実に立ち向かっていくアーティストこそMIYAVIである。12月16日(日)、新木場Coastにて開催された『SAMURAI SESSIONS vol.3』リリースツアー『Before Worlds Collide』は、そんな革命前夜を感じさせる一夜だった。ソールドアウトということもあり、会場は超満員。

照明が落ち、アルバムのオープニングを飾っている「Worlds Collide」が奏でられる。ステージ前に降ろされたスクリーンに映るMIYAVIのシルエットに、割れんばかりの歓声が響いた。新たな世界を切り開く、ショータイムの幕開けだ。

BOBO(Dr.)の刻みに導かれ、流れるように「Rain Dance」へ。ステージ上で踊る彼へ向けられた無数の手は、青いライトの残像となり、冬雨のように振り注ぐ。その光景はできすぎた映画のワンシーンのように熱狂的で、この日が最高の夜になることをすでに物語っていた。彼の代名詞でもあるスラップ奏法を惜しげもなく披露する「Flashback」、オーディエンスのジャンプにコーストが揺れた「In Crowd」と、『SAMURAI SESSIONS vol.3』収録曲を中心としたナンバーが続く。

MCを挟み「I’m So!」というコールをうけ、演奏へなだれ込む。ボーカルのショーンとオリビアも前に出てきて観客を盛り上げる。二人の歌い手を誘惑するように踊るMIYAVIの姿は罪深いほどに妖艶で、“音楽はセックスだ”という言葉の意味を叩きつけるよう。表面上で音を重ねるだけではない、心まで委ねる音楽の表現がそこには在った。<ウオッオッオー>と会場中から歌声が響く「Bumps In The Night」、アコギの細かなニュアンスで魅了する「Our Love」とエンターテイメントを凌駕したパフォーマンスが繰り広げられる。


SHOKICHI(from. EXILE)の登場により、スーパーセッションタイムへと突入。“ノンストップでBeat”が刻まれる「Fight Club」が封切られた。MIYAVIは口角をにやりとあげ、先ほどまでとは違ったやんちゃな表情をのぞかせる。他アーティストとコラボすることにより、新たな彼に出会うことができるのも“SAMURAI SESSIONS”の魅力の一つと言えるだろう。シェネルとのコラボ「Forget You」では一際色っぽい音を鳴らし、シシド・カフカとの「Get Into My Heart」では彼女のドラムに寄り添うようにギターをプレイ。一本のギターで表現できることがこんなにもあることを、彼に出会わなかったら知ることはなかったかもしれない。

三味線奏者の上妻宏光と肩を重ねスタートしたのは「Strong」だ。お互いのリフを掴みあっているような息のあったプレイ、こいこいと挑発するMIYAVIに対してニヤリと返す上妻の姿は、二人の絶対的な信頼の証を物語る。二人が紡ぎだす音楽は一段と“間”が絶妙で美しく、これが日本の音楽芸術における美学だと突き付けられているようだった。

「とあるアーティストのカバーです」と告げて始まったのは、彼が敬愛するhideの楽曲である「Pink Spider(Remix)」。ヘビーなギターサウンドは会場中を突き刺し、この曲を演奏するという覚悟の強さを映し出していた。曲終わりにMIYAVIが遠く見上げた視線の先に、hideがいたのかもしれない。彼の瞳はとても優しく輝いていた。

難民キャンプに影響を受けて書かれたという「Long Nights」、サイケデリックなギターサウンドが響く「Fire Bird」、アッパーチューンとして名高い「Raise Me Up」と繋ぎ、ライブはラストパートをかけていく。

ミラーボールの乱反射が空間を舞い、いっそう会場をきらびやかに盛り上げたのは「Day 1」。ギターのスラップのクールさが一層引き立つこの曲で、会場全体が一瞬座ってからジャンプする場面もあり、地震かと錯覚するほど会場が大きくゆれた。曲のラストには彼の長い腕を高く掲げ、“まだ足りない”と訴えるようにこいこいと手で声を求める。その歓声が沸点に達するとそのまま「Horizon」へ。サビで巻き起こった<おっおっおー!>の大合唱は、MIYAVIの「騒げ!」という声に触発されさらに熱を帯びていく。
ラストを飾ったのは『SAMURAI SESSIONS vol.2』のオープニングである「Dancing With My Fingers」だ。ステージ上で舞い踊るMIYAVIの姿に熱狂するフロア。煽られるまま会場中は揺れに揺れ、ここ新木場Coast全体で壮大なセッションを創りあげているようだった。

メンバー達がステージから去ったあともMIYAVIコールは鳴りやまず、アンコールへと繋がれた。最初に奏でられたのはMIYAVI×雅-miyavi-のナンバーである「Fragile」。弦に触れる指はクラシックギターを触るように優しく、繊細で柔らかいメロディーが紡がれる。3拍子のなかにゆったりと紡がれる思いは、深々と降り積もる雪のようにも感じた。「Me and the Moonlight」では星明かりのようにスマホのライトが会場中で揺れて、「The Others」では会場中が大合唱。

この日ラストに選ばれたのは、MIYAVIのスラップ・ナンバーの代名詞ともいえる「What’s My Name? 2017」だ。縦横無尽にかき鳴らされるギター、熱狂とともに呼応するフロアの大波のようなうねり。その光景は、この日が最高のショーであったことを端的に物語っていた。「Thank you! 東京!」の感謝の言葉で、MIYAVIはこの日のライブを締めくくった。

「邦楽・洋楽」といった括りや概念、ジャンルと呼ばれる目に見えない幾多の壁に正面から対峙し、切り拓き、ときに飛び越える。そんな新しい世界を見せてくれるのがMIYAVIのギターであり、音楽なのだろう。世界がぶつかった(Worlds Collide)あと、新しい世界は待っている。革命の時は近い。

Photo by Yusuke Okada
Text by 坂井彩花

【セットリスト】 2018年12月16日(日) 東京 新木場STUDIO COAST
1.Worlds Collide(Intro)
2.Rain Dance
3.Flashback
4.In Crowd
5.I’m So
6.Bumps In The Night
7.Our Love
8. Fight Club w. EXILE SHOKICHI
9. Forget You w. Che’Nelle
10.Get Into My Heart w. SHISHIDO KAVKA
11.Strong w. 上妻宏光
12.Pink Spider(Remix)
13.Long Nights
14.Fire Bird
15.Raise Me Up
16.Day 1
17.Horizon
18.Dancing With My Fingers
(アンコール)
1.Fragile
2.Me and the Moonlight
3.The Others
4.What’s My Name? 2017

【リリース情報】
『SAMURAI SESSIONS vol.3 – Worlds Collide -』 発売日:2018年12月5日(水)
対戦型コラボレーション・アルバム「SAMURAI SESSIONS」の第三弾!!
昨年末、好評を博した第二弾から一年、ついに続編のリリース!
国内外の豪華アーティスト参加!ビジュアルは蜷川実花が撮影!
参戦アーティスト(アイウエオ順)
アール・エー・シー(RAC)、AK-69、加藤ミリヤ、ガラント(Gallant)、KREVA、サミュエル・エル・ジャクソン(Samuel L. Jackson)シシド・カフカ、ショーン・ボウ(Seann Bowe)、ダックワース(DUCKWRTH)、ヌーズ (NVDES)、hide(X JAPAN/hide with Spread Beaver/zilch)、ベティ―・フー(Betty Who)、ボック・ネロ(Bok Nero)、三浦大知、ミッキー・エッコ(Mikky Ekko)、ユナ(Yuna)、雅 –MIYAVI-
収録楽曲※初回盤、通常盤同様内容
01.Worlds Collide (Intro) / MIYAVI vs Samuel L. Jackson
02.Rain Dance / MIYAVI vs KREVA vs 三浦大知
03.U.G.L.Y. / MIYAVI vs DUCKWRTH
04.In Crowd (Remix) / MIYAVI vs Bok Nero
05.Runway / MIYAVI vs AK-69
06.I’m So / MIYAVI vs NVDES vs Seann Bowe
07.Easy / MIYAVI vs Betty Who vs RAC
08.Knock Me Out / MIYAVI vs Mikky Ekko
09.Gentleman (Remix) / MIYAVI vs Gallant
10.Pink Spider (Remix) / MIYAVI vs hide
11.Get Into My Heart (Radio Edit) / MIYAVI vs SHISHIDO KAVKA
12.Our Love / MIYAVI vs 加藤ミリヤ
13.Me and the Moonlight / MIYAVI vs Yuna
14.Fragile / MIYAVI vs 雅 -MIYAVI-

◆◆初回限定盤(CD+DVD)\5,000(税別) TYCT-69137

【CD】全14曲収録
【DVD収録内容】
MIYAVI “DAY 2” World Tour Live at Zepp Tokyo

◆◆通常盤(CD)\3,000(税別) TYCT-60126

【CD】全14曲収録
https://umj.lnk.to/miyavi_ss3PR

●「Rain Dance / MIYAVI vs KREVA vs 三浦大知」Music Video
https://youtu.be/cKP8jKySDn8
●「Pink Spider (Remix) / MIYAVI vs hide」Music Video
https://youtu.be/TszpjJWHz80

【ライブ情報】

<SAMURAI SESSIONS vol.3 Release Tour“Before Worlds Collide”>

12/16(日)新木場Coast Guest:EXILE SHOKICHI/上妻宏光
12/18 (火)大阪なんばHatch Guest:ちゃんみな 
12/19 (水)名古屋ダイアモンドホール Guest:SKY-HI

Official HP〉 
http://myv382tokyo.com/
https://www.universal-music.co.jp/miyavi/