ゴスペラーズ、25周年イベント「ゴスフェス」2日間で総勢ゲスト12組登場。豪華コラボが実現

2019年12月21日に、メジャーデビュー25周年を迎えるゴスペラーズが、6月22日と23日の2日間に渡り、東京国際フォーラム ホールAにて、初の主催イベント『ゴスペラーズ 25th Anniversary“ゴスフェス”』を開催した。

両日合わせて1万人を動員した本イベントには、年代やジャンルを越え、総勢12組のゲストが出演。ゴスペラーズとのコラボレーションを軸に、多彩なステージを繰り広げた。

ステージの中央に大きな扉。その周りには、中世ヨーロッパを思わせる太い柱がそびえている。迎賓館を思わせるセット。その最初の扉を開けたのは、ゴスペラーズだった。 カラフルなライティングと走るレーザー光線の中で、アッパーチューン「SING!!!!!」で最初から客席を総立ちにさせる。

最初のゲストはMay J.。「Let it go~ありのままで~」を一緒に歌った他、海外ドラマ「PANAM / パンナム」のエンディングテーマとしてコラボレーションした「Up, Up And Away」ではビューティフルなハーモニーを披露した。

続いて登場したのは、ピアニストの妹尾 武。彼らの代表曲「永遠(とわ)に」を筆頭に、数々の曲を手掛けた人物である。MCでは、妹尾のピアノによるイントロクイズ形式で、彼が関わったゴスペラーズ楽曲を紹介するなど、観客を巻き込む演出が楽しい。「妹尾さんが“ゴスペラーズに歌って欲しい。黒沢くん、歌ってみて”と持って来てくれた時“こんな高いキーの曲は歌えない”って言ったんだよね」(黒沢)というエピソードを語った後「この曲が無かったら、今日の『ゴスフェス』も出来てなかったかもしれない」(村上)と紹介されたのが「永遠(とわ)に」。
妹尾のピアノと5人のハーモニーが国際フォーラムに降り注いだ。

次のゲストとして登場したのは岸谷 香。プリンセス プリンセスの「ジュリアン」を6人のアカペラで披露した後、岸谷がピアノの前に座り、歌い始めたのは名曲「M」。5人のコーラスが曲を押し上げる。自分の中の“あの時代”を彩った名曲に、静寂と言うレスポンスで聴き入る観客。終わるとスタンディングオベーションが起こった。岸谷をステージから送り出した後、酒井が「マジ、半端ねぇ~」とポツリ。他のメンバーも高揚した表情を見せている。名曲に “あの時代”を掘り起こされたのは、観客だけじゃなかったようだ。

ゴスペラーズの紹介から、藤井フミヤが姿を現す。ゴスペラーズが藤井フミヤに書き下ろし、コーラスも担当した「RAILROAD」を。モータウン調のポップチューンに会場から自然に手拍子が起こった。トークでは「その衣装、結婚式の新郎みたい。しかも新郎が多すぎる(笑)」と、5人にいきなりつっこみ、会場の爆笑をさらったフミヤ。「Another Orion」を聴かせた後、再びゴスペラーズとともに、チェッカーズの「ミセス マーメイド」へ。間奏では、藤井フミヤとゴスペラーズが一緒にフォーメーションダンス。最後にはステージ中央で6人がポーズを決め、観客から喝采をあびた。

ステージには、加藤登紀子が登場。村上が加藤登紀子に提供した「花筐 〜Hanagatami〜」を6人で歌う。最後の♪ ラララ~ の繰り返しでは、会場中が大合唱となった。2002年にリリースされたこの楽曲。歌入れの際には、村上もレコーディングに立ち会った。その時の様子を「厳しかった」と笑顔で振り返った加藤登紀子。そして次の曲をこんな風に紹介した。「いつかゴスペラーズと一緒に歌いたいと思って、30年前に作っておいたんです」一斉に「デビュー前ですよ!」と突っ込むゴスペラーズに、会場は爆笑。少し間をとって歌われたのは、壮大なバラード「LOVE LOVE LOVE」だった。

ゴスペラーズのステージへ。フリューゲルホルン奏者のTOKUを呼び込み「ラヴ・ノーツ」。ピアノと絡むフリューゲルホルンが、切なく響く。「熱帯夜」「1, 2, 3 for 5」とアップナンバーを続け、会場を沸かせた後は、恩師・佐藤善雄を呼び込み、ラッツ&スターの「Tシャツに口紅」「ハリケーン」を6人でパフォーマンス。ラストはゴスペラーズがアカペラでデビュー曲「Promise」を歌った。アンコールでは、客席を3パートにわけて観客とハモる“なりきりゴスペラーズ”のコーナーもあり、国際フォーラムにいた全員が、一緒に「Stand By Me」を歌った。

 

6月23日、2日目。この日もイベントは、ゴスペラーズの20周年記念シングル「SING!!!!!」で幕を上げた。終わると5人揃ってのMC。昨日22日の同イベント公演が、令和になって東京では初のライヴだったこと、さらに令和の公式英訳が“Beautiful harmony”ということに触れた後、村上がこう叫んだ。「デビュー25周年で、ゴスペラーズの時代が来ました!」超満員の客席から大きな拍手が起こる。

この日、最初のゲストはLittle Glee Monster。ヒット曲「好きだ。」からライブはスタート。曲の途中から、ゴスペラーズの5人もハーモニーに加わり、総勢10人でパワフルにポップチューンを響かせる。
ゴスペラーズとLittle Glee Monster、総勢10人での「永遠(とわ)に」は圧巻のひとこと。歌声だけで、音圧、質量、表情をしっかり表現できるヴォーカルグループが揃った迫力は、このイベントだからこそ感じられた、他のフェスにはない種類のエネルギーだった。

リトグリを送り出した後、「次なるアーティストは、歌いながら紹介してみたい」と、歌い出したゴスペラーズ。 ♪RHYMESTER♪ と繰り返されるドープなアカペラチューンとともに、ステージ中央の扉を開けたのは、RHYMESTER。ド派手なパーティーチューン「Future Is Born」で、総立ちになった観客を躍らせ、「ゴスフェス、カモン!」と客席を煽り、ボルテージをぐんぐん上げていく。間髪入れず放たれたのは「ポーカーフェイス」。
ラストでは、酒井のヴォイスパーカッションとDJのスクラッチが絡む、クールでソリッドなゴスペラーズの一面もお目見え。Mummy-Dの「どうよ、このおじさん達の悪ふざけ」という言葉から火蓋が切られたトーク合戦に、会場も大爆笑で盛り上がる。
しかし最大の盛り上がりを見せたのは、この言葉の後だった。「2年越しの宇宙初演『Hide and Seek』!」。2017年に発売されたゴスペラーズのアルバム『Soul Renaissance』に収録された「Hide and Seek」。RHYMESTERとの共演でステージ披露されたのは、この日が初めて。“これを待っていた!”というのがわかる、絶叫に近いような大歓声がステージに流れ込んでいく。ゴスペラーズとRHYMESTERは、圧巻のパフォーマンスで、その期待に応えた。「お邪魔しました! お騒がせしました。この後も楽しんで行ってください」(宇多丸)と、最後は爽やかにステージを去ったRHYMESTERであった。

会場が暗転する。薄闇に沈むステージ。スポットライトが1人の女性を映し出した。光の中にいたのは広末涼子。一瞬、どよめく観衆。しかし、ヘッドマイクをつけた広末がしゃべり始めると、スッとどよめきが消えた。観客はアーティストの鏡というが、ゴスペラーズの観客は、5人に負けず劣らず、切り替えがうまい。このような演劇と音楽を組み合わせた“シアトリカル(演劇)”スタイルは、ゴスペラーズがデビュー以降、活動のひとつの軸として来たものだ。ミュージカルとも違い、他に類を観ない、彼らオリジナルのエンターテインメントである。
『音楽ディレクター 永山多恵子の決断』というタイトルの劇。時は1968年。広末涼子演じる永山多恵子は、レコード会社のディレクター。自分の心が震える音楽との出逢いを求めていた。そこに現れたのが、ゴスペラーズ演じる5人組ヴォーカルグループ“ファイブ・オーシャンズ”である。自らが務めるレコード会社と専属契約にこぎつけ、ファイブ・オーシャンズがもっと輝くのは、アカペラ、ハーモニーだと気が付いた多恵子。アカペラ楽曲でデビューさせるも結果が伴わず、責任をとらされることに。
多恵子に思いを寄せるファイブ・オーシャンズのマネージャー:安西タケシ(演じたのは盟友でもある俳優の田中聡元)。移籍してでも多恵子と一緒にやりたい……と引き留める。最初は無理だと言っていた多恵子も、マネージャーの熱意に、ほだされるようにもう1度会社にかけあってみる……と笑顔を見せた瞬間、マネージャーがおもむろにポケットから取り出したのは小さな真四角のジュエリーケースだった。ざわめきが笑いに変わる会場。止めて、止めて……という多恵子の言葉を無視して、笑顔で近寄るマネージャー。多恵子の絶叫が会場に響いた。「やめてえええええ―――!」安西の♪ 愛してる~! ♪ という口元の動きに合わせ「ひとり」が始まる。ゴスフェス最大の大爆笑シーンだった。自らの曲、しかもラブバラードをオチに使う豪気。『ゴスフェス』を楽しんでもらいたいという、ゴスペラーズの気概を観た。

次に、三線を持って登場したのは夏川りみ。エヴァ―グリーンな1曲「涙そうそう」と、その歌声で観客を魅了する。トークの後、ゴスペラーズと夏川りみの6人で「童神」をアカペラで歌う。さらに続けて夏川りみへの提供曲でセルフカバーもした「シマダチ」へ。北山が歌い出し、夏川へつなぐ。メロディー、言葉、そして歌に乗せた思いをしっかりつないでいく夏川。サビでは彼女の歌声と5人のハーモニーが、広い会場の隅々までのびていった。
光のように輝く夏川の声の周りを、囲むように5人の声が行き来しているようだった。

次にステージ中央の扉を開けたのは中西圭三。「大学時代、もてたくて、カラオケで圭三さんの曲を歌っていた」(村上)といったエピソードを交えながら、中西に対するリスペクトの思いを語る5人。ブラックミュージックをベースにしたポップスで、日本音楽シーンのチャートを席巻する――ゴスペラーズが目指すスタンスだ。デビュー以降、このスタンスが、ブレイクするまで一貫してぶれなかったのは、中西を含む、先駆者の背中があったからだろう。多くの先駆者が、今なお現役で音楽を続けていることも、ゴスペラーズにとっては心強いはずだ。「歌うのは20年ぶりくらい」(中西)という「WITH」を6人で歌う。まだブレイク前のゴスペラーズが、コーラスを担当した中西のオリジナルナンバーだ。
続けて、中西がゴスペラーズに提供した楽曲「I LOVE YOU,BABY」へ。この曲での中西と黒沢のハイトーンでのハモりのクオリティーは、言葉を失うほどだった。ビブラートもフェイクもなく、ただただ強く、同じ幅で伸びていく2人の声。音楽が共鳴していると思った。

前日に引き続きTOKUを呼び込み、ゴスペラーズのステージがスタート。デビュー10周年記念シングル「ミモザ」を歌った後、5周年の頃を振り返る。「1999年、我々は結構オラオラしてました」(村上)、安岡が金髪になったと笑いを誘った後、「ボリュームたっぷりの“ゴスフェス”も灼熱の後半戦です」と「熱帯夜」へ。ハイトーンや曲のブレイクに合わせて、何度もスモークが噴射された。「エブリバディ! 大きな声で叫べー!」という村上のシャウトから、「1, 2, 3 for 5」へ。両手を上げ曲に合わせてクラップする会場。曲の途中では無数の銀テープが空中に弧を描き、国際フォーラムにキラキラと眩い光を降らせた。

昨日に続き佐藤善雄を呼び込む。村上が「これもゴスペラーズのひとつの形だと思ってます」とラッツ&スターの「ハリケーン」を6人でパフォーマンス。5色の大きな風船が客席に現れ、観客の上を行き来する。曲の途中、ベースヴォーカルの決め台詞は、1番が佐藤、2番を佐藤と北山が担当したが、北山は佐藤の隣に寄り添い、佐藤のマイクで一緒に決め台詞を放った。
ステージが闇に沈む。その中で、スポットライトが捉えたのは、ステージ左端に移動した佐藤善雄だった。ステージ中央に並んでいたゴスペラーズが、佐藤の方に向き直るのが見える。
「1993年.都内のあるライブハウスで、僕は聞いたことのないアカペラ曲に出逢いました」……と語り始めた佐藤。ライブが終わった後、メンバーと話をし「いい曲だね」と言ったと語り、そしてこう続けた。「26年経って、こんなにたくさんの人々とともに、この曲を聴けることに喜びを感じています――ゴスペラーズで「Promise」」。
5人の声だけが、5000人の心を震わせる。感情をこめ、一音一音大事に歌う5人。歌い終えた5人が深々と頭を下げると、会場からは盛大な拍手が起こった。

アンコール。この日のゲスト出演者を呼び込み「Stand By Me」へ。“なりきりゴスペラーズ”で客席がステージと一緒にひとつになっていく。歌い終えると、ゲストや、笹路正徳がバンドマスターを務めたゴスフェススペシャルバンドのメンバー全員で手を繋ぎ、整列すると、村上がマイク無しで満員の観客にこう叫んだ。「夢のような時間を過ごさせていただきました。皆さんのすべてに、感謝します。本当にどうもありがとう!」既に多数の夏フェスへの出演、毎年開催されているアカペラコンサート、ビッグバンド形式の高崎音楽祭への出演などが発表されているゴスペラーズ。まさにノンストップ状態だが、25周年となるメジャーデビュー記念日へ向け、その勢いはますます加速していきそうだ。待望の新作、そして次なる発表を心待ちにしたい。

最後に。「ゴスフェス」で最も印象に残った言葉を紹介したいと思う。「僕たちだけがハモるんじゃなくて、僕たちと皆さんも一緒にハモる。それがゴスペラーズだと思います。これからも一緒にハモっていきましょう」(村上てつや)

文:伊藤亜希
写真:Toshikazu Oguruma / KAORU SATO

<イベント情報>
ゴスペラーズ 25th Anniversary“ ゴスフェス ”
2019年 6月22日(土)・23日(日) 
@東京 国際フォーラム ホールA

出演:ゴスペラーズ

<6月22日 ゲスト>(五十音順・敬称略)
加藤登紀子、岸谷 香、佐藤善雄、妹尾 武、TOKU、藤井フミヤ、May J.

<6月23日 ゲスト>(五十音順・敬称略)
佐藤善雄、TOKU、中西圭三、夏川りみ、広末涼子、RHYMESTER、Little Glee Monster

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